誰が教育費を負担しているのか?

誰が教育費を負担しているのか?

今回は、教育費負担の問題についていろいろと調べてみました。

まずは、幼稚園から大学までの生徒数割合を見てみましょう。
2016年5月1日時点で、国立・公立・私立の各学校等に在籍する児童生徒数の割合は以下の通りです。

児童生徒割合
出典:「学校基本調査」(文部科学省)

私立の幼稚園に通い、小学校から高校までは公立で学び、私立大学へというケースが一番多そうです。これに加えて、大学は国立、高校から私立、中学から私立、すべて公立、すべて私立の全8ケースを想定して、3歳で幼稚園に入園してから22歳で大学を卒業するまでの19年間にかかる学習費の総額を試算してみました。

19年間にかかる学習費の総額

該当者が最も多いだろうと想定したケース1の学習費総額は1,517万円となります。児童生徒数割合による加重平均値が1,527万円になりますので、やはりこれが標準的なケースと考えてよさそうです。
また、幼稚園から高校まですべて公立に通い、国立大学を卒業するケース7では1,213万円、一方、幼稚園から大学まですべて私立に通うケース8では2,678万円と、1,500万円近くの差があります。

3歳で幼稚園に入園してから大学を卒業するまでの学習費総額

出典: 幼稚園から高校までは、文部科学省による「子供の学習費調査」における学習費総額(学校教育費、学校給食および学校外活動費の合計)の試算額
大学は、日本政策金融公庫による入在学費用についての調査結果

上記の試算のもととなるデータは全国平均値に基づくものですので、都市部ではさらに増額となるものと思われます。
たとえば、「子供の学習費調査」では、公立小学校6年生の「学習塾費」は109,568円(年額)となっていますが、SAPIXや日能研などの首都圏の大手学習塾に通う小学校6年生の通塾費用は年間で120~130万円程度に上ります。難関と言われる中学校を志望する子は、小学校4年生くらいから塾に通い始めることが多いようですので、塾代だけで小4~小6までの3年間で200~250万円くらいが上記の試算額に追加されることとなります。

さて、これまでに見てきたのは、教育にかかる費用のうち、あくまでも家計による負担分ですが、たとえば、公務員である教師の人件費等、公費による負担もあります。

文部科学省では、学校教育などのために地方公共団体が支出した経費の状況を明らかにすることを目的として、地方教育費調査を毎年実施しており、2014年度にける公立学校在学者一人当たりの学校教育費は以下の通りです。

在学者一人当たり学校教育費

出典:「地方教育費調査」(文部科学省)

ちなみに、学校教育費のうち、人件費など経常的に支出される「消費的支出」が81%、土地費、設備・備品費、図書購入費などの「資本的支出」が13%、債務償還費が6%となっています。

一方、私立学校については、私立学校振興助成法に基づき、人件費や教材費等の経常費を助成しており、2016年度における私立学校在学者一人当たりの経常費助成額(予定)は以下の通りです。

在学者一人当たり経常費助成額
出典:私学時報データ

仮に、高校までの私立学校のすべてが公立に移管されるとなると、少なく見積もっても、公立学校の一人当たり学校教育費と私立学校の一人当たり経常費助成額の差に児童生徒数を掛け合わせた約2兆円の財源が必要になります。

次に大学教育に関する公費負担の実態をみてみましょう。
2016年度予算では、国立大学に対しては、その運営に必要な基盤的経費とされている「国立大学法人運営費交付金」(運営費交付金)が1兆945億円計上されており、私立に関しては、私立の大学・短期大学・高等専門学校を対象として、私立大学等経常費補助金が3,153億円計上されています。
これを在学生一人当たりでみると、国立では179万円、私立では14万円となります。
因みに、2016年度において、国立大学の中で運営費交付金の配分額が最も多いのは、東京大学で約805億円ですので、大学院生を含む学生数で割ると、学生一人当たり約300万円となります。
私立大学の方は2015年の情報になりますが、経常費補助金の交付額が最も多いのは日本大学で約95億円、次いで早稲田大学が約90億円、慶応大学が約82億円となっています。学生一人当たりでは、慶応大学が約25万円で最も高くなっています。

さて、大学で学ぶ学生の意識はどうなっているのかというと、東京大学が2015年3月の学部卒業生対象に実施した達成度調査(n=2,494)によると、「国立大で税金で教育を受けたという意識がある」学生は51%であったそうです。
私立大学に関しては、同様のデータを見つけることができませんでしたので、学習状況に関するデータを1つご紹介します。早稲田大学が2016年5月に学部生・大学院生等に対して実施した調査(n=4,440)では、春学期の授業平均出席率について「9割以上」が67%で、「8割以上9割未満」が17%でした。大学がレジャーランドと言われていた時代に比べると、随分とまじめに授業に出席しているようです。もっとも、文系では学年が上がるにしたがって出席率が低下し、「9割以上」出席者の割合は、文系3年で60%、文系4年では42%となっています。
学生の皆さんには、親や社会の負担によって質の高い教育を享受できていることを改めて認識し、「もっとまじめに勉強しておけばよかった」と後悔している先輩達と同じ轍を踏むことなく、主体的に勉学に取り組んでいただきたいですね。

高等教育段階での教育支出における公費負担割合は、OECD平均の70%に対して、日本では35%となっており、先進国の中では最も低いレベルであるとの指摘がなされています。
所得が伸び悩む中で、教育費の負担が家計に重くのしかかっており、公的・私的な給付型奨学金の拡充など、日本社会として教育への投資を充実させていくことが求められています。