皆さんは日常的な買い物でスーパーやコンビニを利用されるかと思いますが、ご自宅からどのくらいの距離にお店があるでしょうか。
人口密度や通行量、人の流れの動線など地域によって事情は異なりますが、一般的に、コンビニの商圏は500m以内の徒歩圏内でカバー人口は3,000人程度、食品スーパーだと2km以内の徒歩・自転車で行ける範囲で商圏内人口は5,000~1万人くらいが出店の目安とされています。
さて、人口8,400人のI町には地元の商店街(売り場面積:500㎡)があり、少し離れた場所には大型スーパー(売り場面積:5,000㎡)もあるとします。
この場合、I町の住人はどちらのお店を利用するでしょうか。

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商圏が重なる複数の商業施設がある場合、どれくらいの消費者がどの店舗を利用するかを予測する手法の一つにハフ・モデルがあります。米国の経済学者であるハフ氏が考案したもので、簡単に説明すると、商業施設の来店客数は店舗の魅力度に比例し、そこまでの(時間)距離に反比例する、という考え方です。

店舗の魅力には、立地、ブランド、品揃え、価格帯、売り場面積、駐車場台数などさまざまな要素がありますし、(時間)距離についても交通事情や周辺環境などによって条件が変わってくるでしょう。

また、最寄り品と買回り品など、取り扱う商品・サービスの特性が異なる店舗は分けて考える必要がありそうです。

ただ、できる限り簡便で、定量化できる変数を用いなければ使い勝手のよい分析モデルにはならず、ハフ・モデルでは通常、店舗の魅力度は売り場面積、(時間)距離は直線距離を用いた以下の公式が使われます。

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Pij :i地区の消費者が商業施設jに行く確率(買物出向比率)
Sj :商業施設jの規模
Tij :i地区から商業施設jまでの距離
λ :距離抵抗となる交通パラメータ
n :商業施設の数

なお、λ(交通パラメータ)とは、線路(踏み切り)、幅広い道路、河川、急な坂など、(時間)距離だけでは測れない買い物の抵抗要因を示す値のことで、日本ではλ=2(通産省版修正ハフ・モデル)が用いられることが多いようです。
上記の例で、I町住人の商店街への買物出向比率を求めてみると

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となり、ハフ・モデルでは住人の7割以上、8,400×5/7=6,000人は商店街を利用していると想定されます。
さて、I町から2kmの地点に売り場総面積2,000㎡の食品スーパーが出店する計画がもちあがりました。

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もし、新たなスーパーができるとなると、5/7だった商店街の買物出向比率は

と小さくなり、顧客数は6,000人から3,500人へと大幅に落ち込むことが予想されることになります。
ハフ・モデルは1960年代に作られたもので、ライフスタイルの変化やインターネットショッピングの普及など、現代の買い物行動にそのまま適用するには限界もありますが、今なお商圏分析の基礎として参考にできる点は多いかと思います。

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