疫学と統計

MERS(マーズ:中東呼吸器症候群)の感染拡大が止まりません。
世界保健機関(WHO)の6/16付け発表によると、これまでに累計で1,300人以上の感染者が確認されています。

MERSは、2012年にイギリスで発見されたMERSコロナウィルスが原因の感染症です。
ウィルスの遺伝子解析によると中東のコウモリやヒトコブラクダを起源とする動物感染説が有力で、中東(Middle East)呼吸器(Respiratory)症候群(Syndrome)と名付けられました。

感染すると2~14日の間に発熱やせき、肺炎などの症状が続き、高齢者や糖尿病・高血圧・喘息などの持病がある人だと重症化して死に至るケースもあります。
せき・くしゃみ等によるヒトからヒトへの飛沫感染も懸念され、最近では特に韓国で大流行しており、2002~03年に世界中で猛威を振るったSARS(重症性呼吸器症候群)が思い起こされます。

報告されている死者数/感染者数から想定される致死率は4割近くと非常に高いですが、今のところ感染力はSARSよりも弱いそうですし、韓国だけに限ると致死率は1割強でSARSと同程度になります。

有効な治療薬やワクチンもまだ開発されていないので不安に駆られますが、いたずらに恐れることなく、通常のインフルエンザなどの感染症対策と同様に

● うがい・手洗いの励行
● ウィルスへの抵抗力をつけるため、十分な休息や栄養補給
● 外出時はできるだけ人混みを避け、必要に応じてマスクを着用
● 室内の温度・湿度の管理

といった基本的な予防策を講じることが大切です。

さて、感染症に関する研究を「疫学」といったりしますが、疫学は統計学と深いつながりがあります。

19世紀半ばのロンドンではコレラが大流行していたのですが、当時は感染経路がまだよく分かっていませんでした。

迷信的に空気感染を信じてパニックに陥る市民が多い中、医師のジョン・スノウは徹底的に周辺の聞き取り調査を行い、コレラ菌が発見される30年も前に“統計的に”飲料水の汚染が原因であることを突き止めました。

ジョン・スノウは疫学の父ともいわれています。

また、近代看護教育の母として有名なナイチンゲールは、同時に優れた統計学者でもありました。

イギリスの看護師だったナイチンゲールは、クリミア戦争(1854-56)に従軍し野戦病院で献身的な看護にあたりますが、戦死者の統計をとって死因分析を行い、病院内の衛生改善を強く主張しました。

その際、ナイチンゲールが考案して用いたとされるのが、円グラフの変形で「鶏頭図」と呼ばれるものです。

疫学と統計

「統計」というと小難しくとっつきにくい印象がある人も多いかもしれませんが、歴史上の人物も統計を駆使しながら偉業を成し遂げたと思えば、少しは統計的思考の威力を理解してもらえるでしょうか。

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