自民党総裁に高市氏が就任し、公明党が連立を離脱。その後、日本維新の会との連立合意により新政権が発足しました。
新連立の政策協定で掲げられた柱のひとつが、「国会議員の定数削減」です。

日本維新の会は、連立参加の条件として「議員定数の削減」を掲げ、次回の衆議院選挙で現在の定数465から50議席を減らす案を提示しました。
では、仮にこの案が実現すると、選挙制度や政党勢力にどのような影響があるのでしょうか。

比例代表の定数削減が焦点に

衆議院選挙は「小選挙区比例代表並立制」で行われます。
小選挙区は1人しか当選しないため、定数を減らす場合は選挙区数の調整が難しく、比例代表の削減が現実的とみられます。

現在、比例代表の定数は176。
全国を11ブロックに分け、国勢調査の人口分布に基づいて「アダムス方式」で各ブロックの定数が決められています。

2020年国勢調査に基づく現行区割りで、もし比例代表の定数を50減らして126にした場合、人口の多い近畿ブロックでは定数が28から20に減少するなど、大きな影響が生じます。

比例代表ブロック別定数・削減後の想定

少数政党に不利、与党には追い風

ここでは、総務省の開票結果データを基に、前回(2024年)の得票構成をそのまま用いた単純試算を行いました。

比例代表の議席は「ドント方式」で、各党の得票数に応じて配分されます。
このデータをもとに定数を50減らした場合のシミュレーションを行うと、自民党や立憲民主党の絶対数は減少しますが、全体に占める割合はむしろ自民・維新がわずかに増加します。

一方で、比例代表で議席を得てきた少数政党は、得票率をさらに伸ばさない限り議席確保が難しくなります。
定数削減は「大政党に有利、小政党に不利」という傾向を一層強める方向に働くと考えられます。

定数削減シミュレーションによる政党別議席変化

国際的に見た「日本の議員数」

ところで、日本の国会議員数は多いのでしょうか。

国によって議会制度が異なるため単純な比較はできませんが、上下両院の合計議員数を人口比で見ると、北欧諸国やイギリスなどは議員数が多く、アメリカは少ない傾向にあります。

諸外国との議員一人当たり人口比較

ただし、イギリスの上院(貴族院)は任命制で実質無給の名誉職、北欧諸国では議員報酬が低く兼業も多いなど、制度や職務の性格が異なります。
また、アメリカは州の独立性が高いため、連邦議会の位置づけも他の国の国会とは異なります。

こうした違いを踏まえると、日本の議員数は国際的に見て「特に多い」とは言えないでしょう。

「数」よりも問われるのは「信頼」

議員定数の削減は「身を切る改革」の象徴として注目されますが、本質は数の問題ではありません。
政治とカネの問題をはじめとする透明性や説明責任の欠如が続く限り、議員を減らしても国民の政治不信が解消されることはないでしょう。

議員の数を減らすかどうか以上に、問われているのは「限られた議席をどのように信頼される存在にするか」です。
数の議論を超えて、政治そのものの信頼をどう回復するかが、次の改革課題と言えるでしょう。

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