アンケート/市場調査で満足度や好意度、当てはまる度合いなどを聞く時によく使われるのが5段階評価です。5段階のそれぞれに「非常に」「やや」などの説明がつきます。
この「説明」のことを「評価ラベル」といい、評価ラベルの付け方次第で集計・分析の幅や深みが変わってしまうことがあります。

公的機関が公表している調査結果の例で、評価ラベルの付け方を考えてみることとしましょう。

独立行政法人経済産業研究所が2009年から2010年にかけて実施した「仕事と生活の調査に関する国際比較調査」では、日本、イギリス、ドイツのホワイトカラー職正社員に生活満足度を5段階で評価してもらっています。以下は、各国の男性での調査結果です。

生活満足度

日本では「5. 満足している」と「4. どちらかといえば満足している」を合わせたトップ2ボックス=『満足している』が31.4%、「1. 満足していない」と「2. どちらかといえば満足していない」を合わせたボトム2ボックス=『満足していない』が32.9%、そして真ん中の「3. どちらともいえない」が35.8%と、ほぼ1/3ずつにうまい具合に分かれています。この分布状況であれば、トップ2/ボトム2の軸でクロス集計して満足/不満足の要因を見つけていくことができそうです。

一方で、イギリスとドイツでは、トップ2ボックスがそれぞれ、59.3% 66.6%と『満足している』割合が『満足していない』割合に比べて大幅に高くなっており、トップ2/ボトム2の軸でのクロス集計から満足/不満足の要因を見つけていくのは難しそうです。

日本人と外国人の評価傾向の違いについて、統計数理研究所所長をつとめた故林知己夫先生は、以下のように指摘しています。

私の手元には、様々な調査結果がある。国内の調査では、どれを見ても、「非常に満足」という表現にはあまり回答は集まらないが、「まあ満足」「どちらかと言えば満足」という表現に、回答が多く出てくる傾向がある。
同じ設問を、外国語に翻訳して海外で調査すると、「非常に満足」と答えるケースが多くなるが、日本の「非常に満足」と「まあ満足」を合計すると、日本と他の国は同じような比率になる。
また、日本人は、「どちらともいえない」「時と場合による」という回答を特に好むが、海外では、このような煮え切らない回答はごく少数しか出てこない。

(林知己夫『数字が明かす日本人の潜在力―50年間の国民性調査データが証明した真実』、講談社、2002、P.38)

「仕事と生活の調査に関する国際比較調査」では「非常に満足」のかわりに「非常に」がない「満足している」という表現を使っていますが、それでも日本では「満足している」という表現にはあまり回答は集まっておらず、「どちらかといえば満足している」という表現により多くの回答が出ています。
また、「どちらともいえない」回答もイギリスの約2倍出てきています。

満足度調査でよくみかけるのが「5. 非常に満足している」「4. やや満足している」「3. どちらともいえない」「2. あまり満足していない」「1. まったく満足していない」からなる5段階評価です。
この場合、林先生の指摘にあるように「非常に満足」と「まったく満足していない」を回答する人は非常に少なく、かつ、満足とも不満足とも煮え切らない「どちらともいえない」に多くの回答が集まりがちです。

より高い満足度をめざすのであれば、まずは満足しているのか不満足なのか?はっきりとしてもらって、さらに満足度の上げ方についてより詳しくみていくことができるように満足のレベルを細かく聞いてみたいところです。これを5段階の評価ラベルに表現すると以下のようになります。

評価ラベルの工夫例

上の例では「非常に」のかわりに「とても」を使っていますが、これには理由があります。

以下は、三重大学名誉教授の織田揮準先生が1970年に発表された「日本語の程度量表現用語に関する研究」から抜粋した表です。

実現の程度量表現用語の尺度値図

たとえば大学生481名を対象とした調査の結果を見ると。最高度を表す語の意味付けにおいて「すごく」と「非常に」はほぼ同程度で、「たいへん」「とても」とはかなり程度の差があります。
顧客満足度調査で「満足」の中身に着目した分析をするのであれば、日本語の文脈では選ばれにくい「非常に」よりも、「とても」や「たいへん」を用いるのがよさそうです。

また、『不満足』の区分を「満足していない」の1区分にしているのにも理由があります。
不満足度調査であれば話は別ですが、満足度調査で不満足を1~2%のレベルまで細かく見る必要はないと考えるからです。

さらに「どちらともいえない」がなくなっているのにもお気づきでしょうか。
「どちらともいえない」にはどこか評価すること自体を放棄してしまうイメージがあります。「良くも悪くもない」のであればそれは「ふつう」であるとの評価と位置付けています。

好き勝手に評価ラベルを作ってしまってよいのか?と気になる人がいるかもしれません。
以下の図をご覧ください。いい加減に作ったものではなく、もともとは「どちらともいえない」を中心に満足と不満足がきれいに対称になっている7段階評価の「不満足」3区分を1まとめにした変形5段階評価です。

変形5段階評価

満足度調査の評価ラベルの例で説明しましたが、他の調査でも考え方は同じです。予想される調査結果を見越して評価ラベルを工夫しておくと、集計・分析の幅や深みが増し、調査データの有効活用につながります。

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