日本の生産性は米国やフランスの6割程度

日本の生産性の低さについてはいろんなところで問題視されていますが、実際にどのくらい低いのかご存知ですか?

OECDによる労働生産性(就業者1人当たり)の国際比較によると、日本は加盟国中23位、先進7か国の中では最下位です。

労働生産性の国際比較

国単位の生産性は産業構造(業種や企業規模別の分布状況)の違いなどの影響が大きいので、上位の国の労働者=優秀というわけでは必ずしもありません。
しかし、人口減少で人手不足が懸念される日本において、労働生産性が米国やフランスの6割程度のままでよいとはいえません。

日本の労働時間は長い?

日本の生産性の低さについては長時間労働の非効率さが指摘されることもありましたが、バブル崩壊前の1990年頃までは1人あたり平均で年間2,000時間を超えていたものの、その後は年々減り続け、2020年には約1,600時間となっています。

年間労働時間の推移

労働時間の短い非正規雇用が増えてますし、記録に残らないサービス残業を含めると労働時間が減った実感の薄い人も多いかもしれませんが、全体としては2020年時点で韓国(1,908時間)や米国(1,767時間)よりも短くなっています。

業種別・企業規模別で生産性の違いは大きい

一方、業種別・企業規模別にみてみると、製造業に比べ非製造業の方が労働生産性が低いのですが、製造業では企業規模による差が大きいのに対し、非製造業においては大企業も生産性は高くありません。
もともと労働集約的なサービス業は、企業規模にかかわらず設備投資による省力化も限りがあるのでしょうが、特に、コロナ禍の打撃が大きい「宿泊業、飲食サービス業」の厳しい状況がうかがえます。

業種別・企業規模別の労働生産性

ここで、業種や企業規模による生産性の違いをみていると、実は生産性の改善しやすさを表しているようにも思えます。
宿泊業・飲食サービス業は業務の特性上からも一気に生産性を上げるのは困難でしょうが、生産性が比較的高い業種はさらなる改善の余地も大きいのではないでしょうか。

コロナ禍でみえてきた日本企業の弱点

テレワークの普及も業種・企業規模による差が大きいのですが、2020年にパソコンメーカーのレノボが世界10か国で実施した調査によると、在宅勤務で生産性がオフィス勤務より「下がった」と答えた割合は日本が4割でダントツに多いのです。

在宅勤務で生産性がオフィス勤務より「下がった」と答えた割合

これには、日本の住宅事情や通信ネットワーク環境の問題に加え、法令・社内ルール(ハンコなど)の制約で出社しなければならないことも多かったりして、日本企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)以前のデジタル化が遅れているという面もありそうです。
ただ、それに加えて、海外で主流の「ジョブ型雇用」に比べると、従来の日本の「メンバーシップ型雇用」はテレワークに向いていないのではとも思われます。

自分のなすべき仕事が明確であれば、どこで仕事しようと関係なく、むしろテレワークの方が生産性が上がるという人も多いでしょう。
それに対し、チームで密にコミュニケーションを取りながら仕事内容を調整していく必要があると、なかなか自分のペースで仕事ができずにテレワークに不便を感じることの方が多くなるのではないでしょうか。

アウトソーシングやITツールの活用で生産性向上

コロナ禍によって、デジタル化や雇用形態といった生産性に大きく関わる日本企業の課題がますます浮き彫りになったと思います。
今後、DXに向けた取り組みは加速し、ジョブ型雇用を取り入れる企業も多くなるものと思われます。

ある業務の人手が足りなくなったり、どこの部署の担当で誰が適任か判断できないような仕事が発生したりした時に、新たに採用するのではなく、他の従業員に分担してもらう。これだと一見、生産性が上がるように思えます。
しかし、人手不足だからといって従業員に非効率な複数業務を課すのはジョブ型雇用では通用しませんし、仮に倍の負担をかけたとしても労働生産性は2倍にはならないものです。

必要な人材の確保が難しい場合、すべてを自前で賄おうとせず、アウトソーシングやITツールの活用によって業務をスリム化し、コア業務において貴重な社内人材のパフォーマンスを最大限に発揮できる労働環境を作っていくことが、結果的には生産性向上への近道です。
社内の業務を棚卸ししてみて、人材活用の点で少しでも疑問を持たれるジョブやタスクがありましたら、一度外部の専門家にご相談されてはいかがでしょうか。

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