【7回でわかる!市場調査の基本活用術シリーズ第4回】
はじめに
「何人にアンケートをとれば十分なのか?」
「誰に聞くべきなのか?」
市場調査をはじめると、多くの担当者が最初に直面するのが調査対象とサンプル設計の問題です。
サンプルサイズが大きければ安心感はありますが、コストや時間もかかります。
逆に少なすぎれば「その結果は本当に信じてよいのか?」と社内で突っ込まれることになりかねません。
今回は、担当者が最低限知っておきたいサンプル設計の考え方を紹介します。
調査対象をどう決める?
まず大切なのは「誰に聞くのか」を明確にすることです。
🔷既存顧客
→ 満足度や改善点を把握したいときに有効。
🔷見込み顧客
→ 新商品やサービスの受容性を知りたいときに有効。
🔷市場全体
→ 競合比較やポジショニングを把握したいときに有効。
調査目的に応じて対象を選ぶことが、結果を効果的に活用するための第一歩です。
調査対象を広げて考える
課題によっては、調査対象を一歩広げることが問題解決の糸口になります。
🔷離反顧客
→ なぜ利用をやめたのかを知ることで、改善の優先課題が浮かび上がる。
🔷競合ユーザー
→ なぜ競合を選んだのかを探ることで、自社の弱点や差別化ポイントを把握できる。
🔷販売パートナーや社内関係者
→ 提供側の視点から見える課題や改善アイデアを得られる。
調査対象を「顧客=現在の利用者」に限らず、少し視野を広げて設定すると、より実践的な示唆を得ることができます。
🔗 参考 → 顧客満足度調査では不十分?離脱・休眠顧客に向き合う新しいアプローチ
サンプルサイズの考え方
「多ければ多いほどよい」というのは誤解です。
重要なのは、目的に見合った規模かどうかです。
全体傾向を知りたい → 数百サンプルあれば十分なことが多い
属性ごとに比較したい → 各属性でn=50〜100あると安心
さらに、サンプルサイズと誤差の関係も理解しておきましょう。
標本誤差は回答比率が50%の時に最も大きくなります。
以下は、回答比率が50%の場合のサンプルサイズの違いによる最大誤差を表にまとめたものです。

10,000人に聞けば誤差は±1%程度ですが、100人だと誤差は±10%近くになるわけです。
また、「どのくらいの誤差を許容できるか」で必要人数は変わります。
こちらは、許容できる誤差の違いによる必要サンプルサイズを表にまとめたものです。

誤差を±5%に抑えたいならn=約400、±2.5%ならn=約1,600が必要です。
標準誤差はサンプルサイズの平方根に反比例するため、誤差を半分にするにはサンプルサイズを4倍にする必要があります。
🔗 より詳しくは → サンプルサイズ(人数)はどうやって決める?【便利な計算ツールもご紹介】
サンプリング方法の種類
調査対象をどう集めるかも、結果の信頼性に直結します。
🔷無作為抽出(ランダムサンプリング)
→ もっとも代表性が高いが、実務では難しいことも多い。
🔷割当抽出
→ 性別や年代の比率を決めて集める。比較的現実的でよく使われる。
割当抽出で調査を行う場合、サンプルの構成比が実際の市場(母集団)の構成比に合うようにウェイトバック集計を行うことで、調査結果を母集団の実態を反映したものにすることができます。
🔗より詳しくは → アンケート集計・分析・グラフ化の完全ガイド|データ活用の手法とポイント
🔷便宜抽出
→ 回答しやすい人から集める方法。コストは安いが偏りやすい。
※ ただし、パイロット調査や社内の小規模調査などでは実用的に使えるケースもあります。
外部の調査会社に委託して実施する場合でも、調査担当者としては、「この調査対象はどう集められたのか?」を確認しておくと安心です。
数字の“納得感”をどうつくるか
サンプル設計の本質は「社内で納得感を得られる数字」をつくることにあります。
- 誰に聞いたのか(対象の妥当性)
- どのくらい聞いたのか(サンプルサイズの妥当性)
- どう集めたのか(サンプリング方法の妥当性)
この3点を説明できれば、「その調査は信頼できる」という合意を得やすくなります。
まとめ
調査対象とサンプル設計は、市場調査の信頼性を左右する重要な要素です。
- 目的に合わせて対象を決める
- 必要に応じて調査対象を広げる(離反顧客や競合ユーザーも有効)
- サンプルサイズは「比較単位ごと」に十分かを考える
- 誤差とサンプルサイズの関係を理解しておく
- サンプリング方法の特徴を把握しておく
こうした基本を押さえることで、数字に“納得感”を持たせ、調査結果を安心して活用できるようになります。
次回は「調査手法の選び方──コスト・スピード・適合性の視点から」を解説します。
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