外国人居住者は、いまや日本の人口の約3%を占めています。
労働力確保や地域の活性化など、社会のあらゆる場面でその存在感が高まる一方、実際の数や分布はどの統計で把握すればよいのでしょうか。
今回は、国勢調査・人口推計・住民基本台帳・在留外国人統計といった複数の公的データを比較しながら、外国人人口の実態を読み解きます。
外国人も対象に含まれる国勢調査
国勢調査は、外国人も含めて日本に住むすべての人を対象としています。
ただし、「3か月以上日本に居住していること」が条件で、短期滞在者や旅行者は含まれません。また、大使館や在日米軍基地など、日本の行政が及ばない区域に住む人は対象外です。
このように、国勢調査では“居住実態”に基づいて外国人を把握します。
一方で、調査依頼が日本語中心であることなどから、外国人世帯の回答率は低くなりやすく、実際の居住者数よりも過少に推計される傾向があるとみられます。
2020年の国勢調査時点での人口推計では、外国人人口は約275万人でしたが、その後の推計では2024年には約351万人にまで増加しています。

外国人統計は「三本柱」で読む
外国人の人口を把握するには、以下の三つのデータを使い分けるのが基本です。
統計名 | 主な特徴 | 把握できる範囲 |
---|---|---|
国勢調査(→人口推計) | 5年に一度、居住実態に基づく全数調査 | 実際に住んでいる外国人(3か月以上) |
住民基本台帳人口 | 毎年1月1日時点の登録人口 | 住民票を有する外国人 |
在留外国人統計(法務省) | 在留カードや特別永住者証明書をもとに集計 | 在留資格を持つ外国人(実際に在住していない場合も含む) |
このうち、国勢調査は「実際に住んでいる人」を把握するのに最も適していますが、最新性や更新頻度では在留外国人統計や住民基本台帳のほうが有利です。
調査目的によって、どの統計を使うかを明確にすることが重要です。
外国人居住者は今どこに、どのくらい住んでいるのか
2024年10月の人口推計によると、外国人は日本の総人口の約3%(約351万人)。
一方、2024年12月時点の法務省「在留外国人統計」では、在留資格を持つ外国人は約377万人にのぼり、人口推計よりも約26万人多い結果となっています。
国籍
国籍別では、中国・ベトナム・韓国・フィリピン・ネパール・ブラジルなどが上位を占め、とくにベトナム人の増加が顕著です。

在留資格
日本の在留資格は細かく分けられており、2024年末時点における在留資格別の人数は以下の通りです。

最も多いのは「永住者」で、近年では人手不足を背景に「特定技能」が急増しています。
また、コロナ禍で一時減少した留学生や技能実習生も回復傾向にあります。
在留資格別に国籍の内訳をみると、以下のような傾向があります。
在留資格 | 国籍別の特徴 |
---|---|
永住者 | 最も多い区分で、中国・フィリピン・ブラジル・韓国が中心 |
特定技能 | 近年急増。特にベトナム・インドネシアが多い |
留学 | 中国・ネパールの順に多い |
技能実習 | ベトナムが圧倒的に多く、次いでインドネシア |
性・年代
全体としては、20~30代の若年層が過半数を占めるなど、外国人労働力としての構成が明確に表れています。

外国人比率が高い市区町村
住民基本台帳をもとにすると、外国人比率が高い市区町村には、大都市圏だけでなく観光地・リゾート地も多く見られます。
たとえば東京都新宿区や愛知県豊田市のような大規模自治体に加え、長野県白馬村や北海道倶知安町なども上位に入っています。
これらの地域では、観光・宿泊業やサービス業の人材として、外国人が地域経済を支えていることが分かります。

まとめ――データでとらえる多文化社会のリアル
外国人居住者の増加は、日本社会の多様化を映す鏡といえます。
国勢調査や在留外国人統計、住民基本台帳などの複数データを組み合わせることで、「どれくらい住んでいるのか」「どこに集中しているのか」「どんな層が多いのか」を立体的にとらえることが可能になります。
今後、外国人労働や共生社会が政策課題としてますます注目される中、正確な統計データをもとに議論を進めることが求められます。
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