これからマーケティングに力を入れていきたいとして、
- 市場でのシェアを知りたい
- 市場のどこに、どのようなニーズがあるのか知りたい
というお問い合わせをいただきます。
BtoBとBtoCでは、具体的なアプローチが異なるところがありますが、どのようなタイプの調査が必要になってくるのか大きな方向性については共通する部分が多いものと思います。
U&A(使用実態)調査の内容を知りたい方は「3. マーケティング活動のよりどころとなるU&A(使用実態)調査」からご覧ください。
市場調査で扱うデータの種類
市場調査で取り扱うデータには、一次データ(Primary Data)と二次データ(Secondary Data)の2種類があります。
一次データは当面の問題を解決するために調査を実施して収集するデータで、主にグループインタビューやデプスインタビューなどから得られる定性データと、主に一般的なアンケート調査などから得られる定量データの2種類に分類されます。それに対して、二次データは、政府統計や各種の研究報告、あるいは過去の調査結果など、既に収集されているデータになります。
新たな調査の実施を検討する際には、まずは入手可能な二次データがないかどうかを検討します。デスクリサーチを行い、二次データについて検討しつくしたうえで、より詳しく、より正確で、より新しい、必要な情報を一次データとして収集するのが効果的なやり方です。
市場の顧客構造の分類とデスクリサーチ
市場構造を把握するために、どのような二次データがあるのかを見ていきましょう。
最初に、市場での顧客構造を分類・整理します。
<市場での顧客構造>
※自社の顧客の中には、競合の製品やサービスも利用している「競合の顧客」がいるかもしれません。
上の分類例のうち、顕在化している市場(ユーザー)についての調査・分析テーマを想定します。
【顕在化している市場(ユーザー)についての調査・分析テーマ(例)】
- 既存市場の規模
- 市場の成長性
- 市場の収益性
- コスト構造
- 流通構造
など
想定したテーマについて、参考になりそうな情報源を探し出してデスクリサーチを行います。
【デスクリサーチの対象となる情報源(例)】
- 生産動態統計(経済産業省)
- 商業動態統計(経済産業省)
- 貿易統計(財務省)
- 業界団体
- 民間調査機関(矢野経済研究所、富士経済)
など
政府統計などの統計データを丹念に追いかけていくにはある程度の統計リテラシーが必要になりますので、調査になじみのない方には難易度がちょっと高いかもしれません。そういう場合には、民間調査機関が販売している調査レポートの購入を検討されるのも一案でしょう。
とはいえ、デスクリサーチによって欲しいデータがすべて揃うことは稀です。
マクロ的な動向は政府統計からある程度はつかめますが、その背後にあるユーザー心理の変化を探って製品・サービスの開発・改良に役立てるには、やはり自らリサーチを実施して確実に使える一次データを獲得する必要があります。
マーケティング活動のよりどころとなるU&A(使用実態)調査
マーケティングでSTPといえば、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)ですが、このSTPを行ううえで欠かせないのが、U&A調査(Usage & Attitude Survey)です。
U&A(使用実態)調査は、二次データではカバーすることが難しい潜在市場(ユーザー)もとらえることができますので、マーケティング活動のよりどころとなる、極めて強力な調査です。
以前に比べはるかに実施しやすくなったU&A調査
U&A調査では、潜在ユーザーを含む市場全体を代表するサンプル(代表サンプル)に対して、製品・サービスの所有・使用状況やブランドの認知・購入状況などについて調査を行います。
そのため、たとえば「n=3,000人の全国代表サンプルに対する訪問面接調査」などの大掛かりな調査仕様となり、以前は、非常に高額の費用負担が必要で、準備期間も含めた調査期間は数か月にも及ぶ長期なものになりがちでした。それが今日では、インターネット調査の普及により、短期間に、かつ、低コストでU&A調査を実施できるようになってきています。
U&Aの調査項目と分析方針
U&A調査では、自社や競合の製品・サービスについて、誰が、いつ、どこで、どのように、どのくらい、どのような理由から、購入・使用しているのか(あるいは、購入・使用していないのか)を知るために、主に以下のような項目について調査します。
① 製品・サービスの普及率
製品・サービスを・・・
- 使用したことがある
- 現在使用している
- 使用したことがない
- 使用するつもりはない
など
② 製品・サービスの会社ブランドについての認知・購入・使用率
会社・ブランドを・・・
- 知っている
- 使用したことがある
- 現在使用している
- 現在最もよく使用している
- 今後使用したい
など
③ 製品・サービスの購入・使用状況
製品・サービスについて・・・
- 使用回数や料金などの具体的な使用実態
- 情報源
- 購入のきっかけや選択理由
- 意思決定者など購入時の意思決定状況
など
①製品・サービスの普及率と②製品・サービスのブランド認知・購入・使用率の調査結果を左から順に並べて、市場における自社製品・サービスのブランド力を見える化します。
<ブランド・ウォーターフォール>
競合比較分析
主要な競合他社についても同様のウォーターフォール・チャートを作成して、自社のパフォーマンスと比較することができます。
さらに、競合他社ユーザーについての漏れ分析(Leakage Analysis)を行い、
- 競合他社ユーザーのうち、自社(ブランド)を認知している層
- そのうち、自社(ブランド)の利用を検討したいと思う/検討したことがある層
- さらに、そのうちの自社(ブランド)を利用してみたいと思う層
が、それぞれどの程度存在しているのか明らかにします。
<競合ウォーターフォールによる漏れ分析>
③製品・サービスブランドの購入・使用状況として、「製品・サービスについての情報源」「購入のきっかけや選択理由」「意思決定者など購入時の意思決定状況」などについても情報を収集していますので、競合他社ユーザーに的を絞りこんで、
- いったいどうしたら自社(ブランド)のことを認知してもらえるか?
- 自社(ブランド)のことを認知しているのに、検討したいと思わないのはなぜか?
- 自社(ブランド)について検討したい/検討したことがあるが、利用したいとは思わないのはなぜか?
- 利用候補の中で自社(ブランド)を最も利用したいとならないのはなぜか?
について、深く、詳しく探っていきます。
調査の基本~市場調査会社が書いた「クライアント」のための市場調査の参考書
「市場調査の勉強をするのにおすすめの本はありますか?」
と聞かれることがあります。
調査会社としての視点で、今、仕事で調査を利用している人やこれから調査を利用しようとうする人がおさえておくとよいと思う、「使える」調査についての基本的なポイントをまとめました。
第1部で市場調査をすることの意義や目的を確認した後で、第2部では的外れな調査をしないためのポイントを整理し、そして、第3部ではリサーチデータを活用する視点を紹介しています。