顧客満足度調査(CS調査)でビジネス成果を導く実施ポイントと分析法の詳細解説

レジャー・観光、小売、飲食などBtoC企業向け

顧客の声をビジネス成長に活かす!顧客満足度調査の効果的な実施法

レジャー・観光、小売、飲食など、一般消費者を対象としてビジネスを展開するBtoC企業にとって、顧客満足度調査は成長と競争力強化を図るために不可欠な手段です。
調査を通じて得られる深い顧客理解は、強固な顧客関係の構築を支え、さらに競合との差別化にもつながります。顧客満足度調査を効果的に活用することで、顧客の期待に応え、盤石な顧客維持基盤を確立することができます。

ハーバード・ビジネス・レビュー誌の記事には「新規顧客の獲得には、既存顧客の維持よりも5倍から25倍の費用がかかる」とあり、NPSの開発者であるフレデリック・ライクヘルド氏は「金融サービスでは顧客維持率が5%増加すると、利益が25%以上増加した」と報告しています。

しかし、顧客満足度調査を実施しようとすると様々な疑問や課題に直面することが少なくありません。

❝アンケートの回答が集まらない❞
❝集計結果をグラフにするだけで、現状アンケートをうまく使えていない❞

これらのお悩みには多くの問題点が凝縮されています。

アンケート回収数を劇的に増やす方法

回収数が少ないと、調査そのものが成り立たない恐れがあります。

調査の信頼性を確保するためには、少なくとも30人以上、できれば50人以上から回答を集める必要があります。回収数が少ないと、誤差が大きくなり、信頼性が低下します。

また、ある程度数が集まったとしても、回答してくれた人の割合が低いと、回答の分布に偏りが生じるリスクを増加させます。顧客満足度調査の回答者が、企業に意見や気持ちを伝えたい人、たとえば、極めて満足度が高い人や大きな不満を抱えた人に偏ってしまう恐れがあります。

回収数を増やすためには、割引クーポンなどの謝礼を提供するのが効果的です。
また、紙のアンケートを渡して回答を依頼しているのであれば、Web上の回答画面にアクセスするためのQRコードなども掲載して、紙でもWebでも好きな方法で回答できるようにすると、劇的に回収数を増やす効果を期待できます。

満足度調査で見ている顧客体験とは

たとえば、ホテルが、宿泊客の満足度を知るために宿泊客アンケートを実施する場合を考えてみましょう。

ホテルの顧客体験とは、顧客が宿泊するホテルを調べて、予約し、滞在して、チェックアウトし、さらにそのプロセス全体を振り返る一連の気持ちや行動を含むものです。

ホテルの顧客体験を表すカスタマージャーニー。「旅行ニーズ発生」→「情報検索・予約」→「チェックイン・滞在」→「チェックアウト・宿泊後」

アンケートでは、カスタマージャーニーの様々なポイントについてのフィードバックを得ることが重要です。

顧客体験を網羅する効果的なアンケート設計法

引き続きホテルの場合を例にとり、顧客体験全体を「宿泊前」「宿泊中」「宿泊後」の3つに分けてアンケートの項目を考えます。

宿泊前の顧客体験

宿泊前として、旅行情報の収集からホテルの比較、そして予約に至る過程の評価ポイントをリストアップします。

[宿泊前の主な評価項目(例)]

  • (旅行サイトなどでの)情報の見つけやすさ
  • ホテルのWebサイトに掲載されている情報
  • 自分の希望に合う客室タイプがある
  • 予約確認などの事前連絡

宿泊中の顧客体験

宿泊中については、チェックインしてからチェックアウトする前までの滞在中の経験評価をしてもらいます。

[宿泊中の主な評価項目(例)]

  • ホテルの立地
  • チェックインのスムーズさ
  • 客室の間取り・広さ
  • 客室の設備・備品
  • 客室の清潔さ
  • スタッフの対応
  • 朝食のおいしさ
  • 館内の清潔さ
  • チェックイン/チェックアウトの時間

宿泊後の顧客体験

さらに、チェックアウトに加えて、宿泊後にも評価のポイントとなることがあります。

[宿泊後の主な評価項目(例)]

  • チェックアウトのスムーズさ
  • 利用できる支払方法
  • (オンライン・レビューなど)宿泊後に伝えた要望に対する対応

顧客体験の全体評価

カスタマージャーニーを宿泊の前・中・後の3段階に分けた詳細項目評価とは別に、顧客体験の全体評価も必要です。

全体評価質問としては以下のようなものがあり、これらを詳細項目評価に入る前のアンケートの冒頭部分で質問します。
これは、全体評価を後で質問すると、先行する個別詳細評価の影響を受けやすくなるためです。

[全体評価質問項目(例)]

  • ホテルに対する総合満足度
  • 推奨意向
  • 再利用意向
  • コストパフォーマンス(サービス内容に見合う料金のお得さ)評価

小売業や飲食業などでも同様に、購入・利用の前/中/後に分けて、アンケートの質問項目をリストアップしていきます。

顧客満足度調査を活かせていない原因と対策

「集計結果をグラフにするだけで、現状アンケートをうまく使えていない」とすれば、それは調査が形骸化してしまっていて、調査結果を見ても、「何を」「どうすれば」もっとよくなるのか、具体的な改善策が見えてこない状況です。

こうした問題の背後には「顧客セグメンテーションの難しさ」「重要課題の特定の難しさ」などの根本原因が潜んでいます。

顧客セグメンテーション

分析の基本は、まずは全体像を把握したうえで、重要なポイントに的を絞って詳しく見ていくことで、これは顧客満足度調査にも当てはまります。

先ほどのホテルの宿泊客アンケートを例にすると、調査を実施して「宿泊客の満足度が何パーセント」という結果がでてきても、そこに何かの改善につながるような答えはありません。性別や年代、宿泊の目的が違えば、ホテルに求めるニーズも違ってくることでしょう。平均とは実は存在しない虚像です。

宿泊客アンケートの回答者をその属性によっていくつかのグループに分けてみることで、顧客像がよりクリアになり、有用な情報を得ることができます。一例として、旅行の目的と同伴者の有無に着目すると、宿泊者を以下の6つのタイプに分類することができます。

[利用目的による基礎的なタイプ分類例]

レジャー レジャー・ソロ レジャー目的で、1人で利用
レジャー・カップル レジャー目的で、カップルで利用
レジャー・ファミリー レジャー目的で、家族で利用
レジャー・グループ レジャー目的で、友人・知人と利用
ビジネス ビジネス・ソロ ビジネス目的で、1人で利用
ビジネス・グループ ビジネス目的で、同僚などと利用

先に「アンケートの回収数は少なくとも30人以上」必要と述べました。6つのタイプ別に調査結果を見るには、それぞれについて少なくとも30人ずつの回答が必要です。6つに分類するのが難しい場合でも、100人から回答を集めることができれば、利用目的別にレジャーとビジネスの2つに分けて分析することができるかもしれません。

調査から成果を引き出すためには、なによりもまずアンケートの回収数を増やすことが必須です。

重要課題を見極めるためのデータ分析の進め方

優先的に改善に取り組むべき重要課題を特定できるかどうかが、顧客満足度調査を最大限に活用するためのカギとなります。
重要度分析を行えば、カスタマージャーニーに対応する様々な評価要素の中で、何がどのくらい重要度なのかを特定することができます。

満足度と重要度を組み合わせて改善要素を見つける

満足度の評価結果と重要度の分析結果を並べてみたとき、重要度が高くて満足度も高ければそこが強み、重要度が高いのに満足度が低ければそこが弱みの可能性があります。強みは維持し、弱みは優先的に改善に取り組むべき要素の候補となります。

重要度と満足度評価を比較したグラフ

どこまでの改善が必要かを見極める

さらに多変量解析を行い、優先的に改善に取り組むべき要素について、どこまでの改善が必要なのかを明らかにすることができます。

サービス品質の評価と満足度は必ずしも直線的な(サービスの品質が向上すれば、その分、満足度が上がる)関係にはなく、ある一定のレベルで頭打ちとなったり、あるいは、急に大きく上がったりすることもあります。

これは「狩野モデル」とよばれる考え方で:

  • 「当たり前品質(不満足要因)」は、充足されて当たり前で特に評価されないが、不充足だと不満。
  • 「一元的品質(一般的要因)」は、充足されれば満足だが、不充足だと不満。
  • 「魅力品質(満足要因)」は、不充足でも特に不満ではない(仕方がないと思う)が、充足されれば満足。

となり、これらをグラフに表すと以下のようになります。

①当たり前品質:品質がある一定の水準に満たないと、満足度が大きく低下するが、一定の水準を満たすと、それ以上の品質改善は満足度の向上につながりにくい。  ②一元的品質:品質が改善すると、満足度が向上する。品質が低下すると、満足度も低下する。  ③魅力的品質:多少品質が悪くても仕方がない(不満には思わない)が、品質がある一定水準を超えると、満足度が大きく向上する。

同じ要素でも、顧客のタイプによって「当たり前品質」になれば、「一元品質」になることもあるため、どこまでの改善を目指すのかを検討するうえで、顧客セグメント別にデータを分析して重要要素の特性を把握することが有効です。

顧客理解の解像度を上げる自由回答分析

優先的に改善に取り組むべき要素について「では、どのようにすればよいのか?」具体的な改善策を検討するためには、さらに詳しい情報が必要になります。

ここでヒントになるのが満足度理由などの自由回答です。顧客の生の声を聴く自由回答質問を上手に組み込み深く分析することで、具体的なニーズについて解像度の高い情報を得ることができます。

当社では、満足度の評価理由を問う際には、顧客が特に満足した、あるいは、特に不満を感じた経験について、具体的なエピソードを記述してもらう方式をおすすめしています。これは顧客の満足/不満足の要因を深堀するクリティカルインシデント法を応用した分析アプローチです。

以下は米国での研究結果です。グラフ中の「ゲシュタルト評価」とは「不満なところがない」「よかった」「いつもありがとう」など、個別具体的な体験を特定しない包括的な評価のことです。
普通のやり方で聞くと「ゲシュタルト評価」的な漠然とした理由が非常に多く述べられ、大して参考にならない場合があります。クリティカルインシデント法では、満足/不満足のエピソードから顧客のニーズや要望を具体的に引き出すことができます。

クリティカルインシデント法による満足/不満足要因の分類

顧客満足度調査の実施フロー

当社に顧客満足度調査の実施をご依頼いただいてから調査結果をお届けするまでのフローは以下のようになります。

顧客満足度調査の実施フロー

全体の所要日数は、どのような方式で調査を行うのかによって異なり、貴社内での検討・確認のための時間も含めて、Webのみで実施する場合には最短で2~3週間程度で完了することができます。

時間は重要な経営資源の1つです。貴社のスケジュールに合わせた迅速なインサイト提供を実現できるよう柔軟に対応します。

顧客満足度調査を成功に導く伴走型サポート

優れた分析を通じて導き出された顧客満足度調査の結果は、商品・サービス品質向上への取り組みを導く重要な指針となります。企業は顧客満足度調査を有効に活用して顧客ロイヤルティを高めることで、ブランド価値を向上させ、市場での競争優位性を確立することができます。

当社のサービスは、顧客企業に寄り添いながら、細やかなサポートを行う『伴走型』であるところに特徴があります。経験豊富なリサーチャーが貴社の担当者様と密接に連携し、ただデータを提供するだけでなく、貴社のビジネス目標に向けた具体的な改善策を共に考え、きめ細やかなサポートを提供します。

これから顧客満足度調査の実施をお考えの企業様や従来の調査から期待する効果を得られていないとお悩みの企業様は、お気軽に当社の無料相談をご利用ください。