はじめに

顧客満足度調査は、ビジネスの成長を推進するための重要なツールです。しかし、多くの企業が「他社がやっているから」という理由で、一般的な調査方法をそのまま導入しています。
それらの方法の多くは、米国で開発され、発展してきたものです。日本市場に特有の要素、例えば文化的な背景を踏まえた日本人の回答傾向などを考慮せずに調査を行うと、結果の解釈に誤りが生じる可能性があります。
このコラムでは、日本企業が知らない、あるいは見落としがちな「日本市場に合わせた顧客満足度調査の実施方法」について解説します。

日本人のアンケート回答スタイルの特性

日本人がアンケートに回答する際の特性は、調査結果の解釈に大きな影響を与えます。特に次の二つの傾向に注意する必要があります。

極端回答傾向 (ERS:Extreme Response Style)

多くの国や文化圏では、アンケート回答者が極端な選択肢を選ぶ傾向が見られます。しかし、日本人はこの傾向が低く、極端な選択肢を避けることが一般的です。例えば、10点満点の評価で10点や0点をつけることは稀です。

中間回答傾向 (MRS:Mid-point Response Style)

一方で、日本人は中間の選択肢を選ぶ傾向が強く見られます。これを「高MRS」と言い、選択肢の両極を避けて真ん中を選ぶことが多いのが特徴です。例えば、5段階評価で真ん中の「3 どちらともいえない」の割合が非常に高くなります。

この低ERS-高MRSの傾向は、日本人の文化や価値観に起因すると考えられます。例えば、極端な意見を避け、調和を重視する文化が、この回答スタイルに影響している可能性があります。

日本とアメリカの回答分布を比べてみる

日本では中間回答者の割合が非常に高くなるのに対して、アメリカでは、普通に良ければ満点に近い点数をつける人の割合が高くなります。

日本とアメリカの評価分布を比べてみる

顧客満足度調査はアメリカから持ち込まれたものですが、日本人の回答スタイルに合わせたやり方を工夫しなければ、成果を上げることが難しくなります。

低ERS-高MRSという日本人特有の回答傾向が顧客満足度調査に与える影響は大きく、以下のような問題を引き起こすことがあります。

  1. 不正確な満足度:中間回答が多いため、真の満足度が低く見積もられることがある。
  2. 不十分な改善情報:極端な意見が少ないため、具体的な改善のヒントを見つけにくい。
  3. 不適切な国際比較:他国との比較時に、回答傾向の違いが結果の解釈を歪める。

日本人特有の回答傾向に対して、必要な対処を行わずに調査を実施し分析を進めると、満足度について正しい情報を得ることができず、有効な対策を講じることが困難になります。

日本市場におけるNPSの課題

NPS(Net Promoter Score)は、顧客ロイヤルティの指標として世界中で広く使用されています。しかし、そのままの形で日本市場に持ち込むと、いくつかの誤解と課題が生じることがあります。

低ERS-高MRSの影響から、日本では推奨者が少なく、批判者が多くなるため、NPSスコアはマイナスになることが多くなります。NPSスコアがマイナスになること自体が問題なわけではありません。問題なのは、日本では本来推奨者と定義されるべき人が推奨者に区分されていないこと、本来は中立者または推奨者である人が批判者に含まれてしまっていることです。

推奨者が推奨者たるべき理由、批判者がなぜ批判者であるのかを掘り下げてみていくときに、そもそもの定義に問題があると有用な情報を得ることができません。日本市場に合わせた定義の調整、すなわち、批判者、中立者、推奨者の範囲を日本人の回答傾向に合わせて調整することについて、少なくとも検討してみる価値があります。

日本市場に合わせた調査設計の重要性

顧客満足度調査の成果を最大限に引き出すためには、日本人の回答傾向を理解し、それに対応した調査設計が欠かせません。

設問の工夫

  • 中立的な選択肢の排除: 日本人は中間回答傾向(MRS)が強いため、中立的な選択肢を排除することでより明確な意見を引き出す。
  • 極端な表現を避ける: 極端回答傾向(ERS)が低いため、極端な表現を避けより穏やかな言葉を使用する。

日本流のNPS定義

  • 推奨者、中立者、批判者の範囲の調整: 日本人の回答傾向に合わせて、NPSの定義を調整する。

日本サイズ

洋服の場合、同じMサイズでもアメリカと日本では大きさが異なります。
NPSの定義も日本人に合わせたほうが使い勝手がよくなります。

日本人の回答傾向に対応した調査設計は、顧客満足度調査の成果を最大化するために欠かせない要素です。設問の工夫、NPSの定義の調整によって、日本市場における真の顧客満足度を正確に把握することが重要です。

数値だけでは不十分!質的な深堀分析が必要

数値データは重要な情報を提供しますが、それだけでは顧客満足度の全体像を把握するのが難しいことがあります。質的な深堀分析を通じて、顧客による回答の背後にある理由、感情、価値観を理解し、より具体的で効果的な改善策を検討・実施することが可能になります。具体的な方法としては、自由回答の分析、インタビュー調査などの方法があり、それらを組み合わせることでより深い洞察を得ることができます。

質的な深堀分析が必要である理由

  • 背後の理由の把握:数値だけでは理解できない顧客の感情や価値観をつかむ。
  • 具体的な改善策の提案:数値からは導き出せない具体的な改善策を見つける。

質的な深堀分析の方法

  • 自由回答の分析:顧客の感情や意見を深く探る。
  • インタビュー調査:顧客の本音やニーズを詳細に把握する。
  • 顧客ジャーニーマップの作成:顧客体験全体を視覚化し、各タッチポイントでの感情や評価を理解する。

まとめ:顧客満足度調査の戦略的活用

顧客満足度調査は、企業の成長と競争力向上のための重要な戦略ツールです。

その効果的な活用のためには、日本人の回答傾向や市場の特性を理解し、それに合わせた調査設計が必要です。また、数値だけではなく、質的な分析を通じて、真の顧客ニーズと感情を理解する必要があります。

そうすることによって、顧客満足度やNPSを単なる指標から、企業の成長と顧客との強固な関係を築く強力なツールへと変貌させることができます。

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