
顧客満足度調査(CS調査)でビジネス成果を導く
実施ポイントと分析法の詳細解説
顧客満足度調査(CS調査)の価値
ビジネスの成長を支える顧客の声
顧客満足度調査は、提供する商品やサービスの評価を行い、その改善の方向を明確にするための鍵となる手段です。この調査を活用することで、企業は顧客のニーズや期待を深く把握し、それをもとにした最適な商品やサービスを展開することが可能となります。顧客のフィードバックは、ビジネスの成長や商品・サービスの向上のための貴重な情報源です。
期待と経験の一致が生む満足
商品やサービスが期待通りだった場合、顧客は満足します。たとえば、広告を見て「便利そう」と思い購入した商品が、実際に期待通りの効果を発揮したら、顧客はその商品に満足します。
期待を超える経験が生む継続・推奨
先ほどの例でいえば、実際に商品を使ってみたところ、単に便利なだけでなく、購入時には思ってもいなかったような効果も実感できた時には、顧客は期待以上の驚きや喜びを感じます。このような感動するほどの満足を感じてもらえてはじめて、「次も買おう」「使い続けよう」「友人にも教えてあげよう」という継続利用意向や推奨意向につながります。
顧客満足度調査の効果的な活用法
顧客満足度調査は、ビジネスの成功を後押しする重要なツールです。しかし、多くの企業で調査結果の活用が十分でない、調査の内容がマンネリ化しているという問題が浮上しています。こうした問題の背後には、「調査設計の不備」「数値への過度な依存」「重要な課題の特定の難しさ」などの根本原因が潜んでいます。顧客満足度調査を最大限に活用するための鍵は、以下の4つの要点に集約されます。
- ビジネスの特性に合致した最適な顧客満足度指標を選ぶ
- 全体と細部のバランスの取れた効果的な調査票を設計する
- 数値の背後に隠れた顧客のニーズや期待を深く理解する
- 優先度を考慮し、最も重要な改善項目を特定する
以下、それぞれのポイントに対するアプローチについて詳しく説明します。
ビジネスの特性に合致した最適な顧客満足度指標を選ぶ
顧客満足度調査成功の鍵を握るのが、適切な指標の選定です。顧客満足度を評価するための主要な指標と、それらの特徴、メリット、デメリットを理解し、ビジネスの現状や目的に合わせて活用することが求められます。代表的な指標として、「ネットプロモータースコア(NPS)」「満足度インデックス(CSI)」「総合満足度(トップ2ボックス)」について、説明します。
ネットプロモータースコア(NPS)
NPSは、顧客が友人や家族に推奨する確率を示すシンプルな指標です。具体的には、「○○○を友人・知人にすすめる可能性はどれくらいありますか?」との質問に対して、「10.必ずすすめる」~「0.決してすすめない」の11段階で評価してもらった推奨意向の、「9~10点」の人(推奨者)の割合から「6点以下」の人(批判者)の割合を引いた数値です。シンプルでわかりやすいのが特徴ですが、一般に他の指標にくらべ測定誤差が大きく、また、日本では10点がつきにくいなどの点に留意する必要があります。
満足度インデックス(CSI)
CSIは、満足度関連の複数の回答データから算出した指標です。具体的には、総合満足度や継続利用意向、推奨意向などの回答データをもとに、構造分析などを通じて「満足度」得点を算出し、インデックス化した数値です。複数の評価質問をもとにインデックス化しているため、測定誤差が小さくなる点で優れていますが、他社や過去のCSIとの比較なしにスコア自体から意味を読み取ることが難しい指標です。
総合満足度(トップ2ボックス)
総合満足度は、「どれくらい満足しているか」の満足度質問に対する回答者の割合です。具体的には、5段階評価の場合は上位2つの評価、たとえば「非常に満足」と評価した人の割合と、「満足」と評価した人の割合を合計した値を、満足度トップ2ボックスと言います。これにより「満足している」人の割合がわかるものの、先に説明したように「満足」だけではロイヤルティとの結びつきが弱い場合がある点に留意する必要があります。

複数の指標を組み合わせた効果的な活用法
後で詳しく説明しますが、指標の数値だけでなく、顧客からの具体的な評価理由を通じて、背後にあるニーズや要望を深く理解することが必要です。複数の指標を取り入れ、その評価理由と合わせて活用することで、より深い洞察を得ることができます。
一般的に、BtoCビジネスの場合は、NPS方式の推奨意向、総合満足度に加えて、継続利用意向の3つを聞くのがおすすめです。一方、BtoBビジネスにおいては他者(他社)への推奨意向に現実味がないことが多く、その場合には総合満足度と継続利用意向の2つで十分でしょう。
なお、NPSについて批判者や推奨者の定義をそのまま用いると、多くのケースで数値がマイナスになってしまいます。
満足度のレベルを高めていく施策検討につなげるためには、数値が上がった/下がったに一喜一憂するのではなく、「なぜ」上がった/下がったのかを探っていくことが求められます。そのためには批判者や推奨者を正しく分類できるように、日本人特有の回答傾向を考慮した定義にカスタマイズすることが有効です。
※ 推奨意向やNPSの調査結果を見る時の注意点について「推奨意向やNPSなどの調査結果を鵜呑みにしてはいけない理由」にまとめています。
また、総合満足度についても、日本では最高/最低の評価が出にくいうえに真ん中が選ばれやすいため、選択肢の構成を工夫しておく必要があります。
※ 日本人に特徴的なアンケート回答スタイルについて「日本人特有のアンケート回答スタイル」にまとめています。
全体と細部のバランスの取れた効果的な調査票を設計する
顧客満足度調査の成果は、調査票の設計に大きく依存します。全体的な評価と具体的な詳細評価のバランスを適切に取ることで、より有意義なフィードバックを得ることができます。以下、調査票を構成する4つの主要なセクションについて詳しく解説します。
- 全体評価セクション(+評価理由の自由回答)
- 個別評価セクション
- 利用実態セクション
- 対象者の特性セクション(性別、年齢など)
全体評価セクション:総合的な顧客の声をとらえる
このセクションでは、自社の商品やサービスに対する顧客の総合的な評価を取得します。この部分が、企業の全体的なパフォーマンスを表す指標になります。しかし、具体的な改善策を策定するためには、「個別評価セクション」での詳細な情報が欠かせません。
個別評価セクション:具体的な改善点の発見
ここでは、商品やサービスの具体的な要素についての評価を収集します。ここでの情報は、具体的な改善策の策定において非常に価値があります。ただし、評価項目が細かすぎると顧客が混乱する可能性があるため、適切なバランスを保つことが重要です。
利用実態セクションと対象者の特性セクションの活用法
これらのセクションは、顧客の属性や利用状況に関する詳細を知るためのものです。特に、これらの情報を使ってクロス集計をすることで、様々な角度から改善のヒントを得ることができます。
クロス集計とは、2つ以上の質問項目や選択肢の関係性を分析する手法です。BtoBビジネスの場合、たとえば、支店や部門、担当者などの情報と満足度を組み合わせてクロス集計を行うことで、特定の支店や部門が高い満足度を持つ理由を見つけて、その成功要因を他の部門にも展開するためのヒントを得ることができます。
以下のページでは、様々な目的に応じた「プロ監修の効果的なアンケートテンプレート」をダウンロードすることができます。「カフェのお客様アンケート」や「BtoBの顧客満足度調査」など、満足度調査用のテンプレートもありますので、よろしければご利用ください。
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数値の背後に隠れた顧客のニーズや期待を深く理解する
数値だけではわからない顧客の感情やニーズ
単純な平均点やパーセンテージは、情報として伝わりやすい一方で、その数値のもととなる顧客の感情やニーズまではわかりません。たとえば、商品の満足度が80%である場合、残りの20%が不満足である理由は何か?それを理解することが、真の顧客理解への鍵となります。
自由回答を通じた質的な情報の収集
具体的には、総合的な評価指標に対する理由を顧客に自由に記述してもらうことで、数値だけではとらえきれない質的な情報を得ることができます。この自由回答は、顧客の本音や具体的な要望を知るうえで非常に価値があります。
ただし、自由回答から得られる情報は多岐にわたるため、それらの情報を効果的に分析するためには、回答内容をカテゴリー分けしてコード化することが必要です。このコード化されたデータをもとに、具体的な顧客の声や感情を定量的に分析することが可能となります。

社内での報告や共有時には、カテゴリー別の集計結果に、各カテゴリーに代表的なカスタマーボイス(顧客の生の声)を併記することで、数値の裏側にある感情やニーズを具体的に伝えることができます。
※自由回答の活用法と分析テクニックについては、「自由回答(フリーアンサー)の最適な活用法と分析テクニック」で詳しく説明しています。
顧客からの具体的なフィードバックの取得方法
例として、総合満足度の評価に続いて、以下のような質問をすることで、顧客の具体的な評価や期待を引き出すことができます。
当社について〇〇〇(※〇〇〇には「やや満足」など、総合満足度評価の回答内容を表示します)とのことですが、「ここに満足している/不満がある」「こんなことを期待している」などございましたら、具体的にお聞かせください。
このようなアプローチにより、顧客からの具体的なフィードバックを、商品やサービスの改善のための貴重な情報として活用することができます。
優先度を考慮し、最も重要な改善項目を特定する
すべての顧客の意見に対応するのは非効率的
顧客の意見は非常に重要ですが、すべての意見に対応するのは非効率的であり、効果的な改善が難しくなることもあります。そのため、顧客満足度調査の結果をもとに、どの部分を優先的に改善すべきかを明確にすることが重要です。
ここでの鍵となるのがキードライバー分析です。この分析を通じて、満足度に大きく影響を与える要因やその重要性を特定することができます。たとえば、商品・サービスの品質や営業マンによるサポートなど、どの要因が顧客の満足度に最も影響を与えているのかを明らかにすることができます。
満足度が低い=即座に改善が必要ではない
一般的な誤解として、「満足度が低い=即座に改善が必要」という考え方がありますが、これは必ずしも正しくありません。たとえば、商品の価格に対する満足度が低くても、それが顧客の満足度に大きな影響を与えていない場合、他のより重要な要因の改善を優先するべきです。

キードライバー分析には、重回帰分析という統計解析手法がよく用いられます。重回帰分析で、複数の要因が満足度にどれだけの影響を与えているのかを数値で示すことができます。
※ アンケート分析の多変量解析手法: 重回帰分析については「アンケートの分析で使える多変量解析手法~重回帰分析」で詳しく説明しています。
ロイヤルティ向上のための3ステップ分析法:顧客満足を追求し、ロイヤルティを強化する
ビジネスの持続的な成長の鍵は、単なる顧客の「満足」を超えて、真の「ロイヤルティ」を獲得することです。継続的に商品やサービスを利用し、さらに他者への推奨を行うロイヤルティの高い顧客は、ビジネスの拡大に大きく寄与してくれます。顧客満足度調査を最大限に活用し、ロイヤルティを強化するための具体的なアプローチを以下に示します。
ステップ1:顧客の「不満」の原因を明確にする
まず、顧客がどの要素に対して不満を感じているのかを特定します。満足度評価のレベル別にクロス集計を行い、不満の原因を明確にすることで、効果的な改善策の策定が可能となります。
ステップ2:「満足」の背後にある要因を探る
次に、「満足」の評価をもたらした要因を深堀りします。キードライバー分析からどの要素が顧客の満足度に大きく影響しているのかを理解し、それをさらに強化することで、満足度の向上を図ります。
ステップ3:単なる「満足」を超えて「とても満足」を実現するための要素を特定
最終的には、顧客が単なる「満足」ではなく「とても満足」と感じるための要因を特定します。期待を超えるサービスや体験を提供することが、顧客ロイヤルティを獲得するための鍵となります。
これらのステップを通じて、顧客満足度調査の結果をもとに、ロイヤルティの向上を実現する戦略を策定することができます。ロイヤルティの高い顧客の行動、たとえば「継続的な利用」「利用の拡大」「他者への推奨」を促進するための調査と分析が、ビジネスの成功に不可欠です。
顧客満足度調査の実施方法:BtoBとBtoCの違いを理解し、最適な手法を選択する
顧客満足度調査を実施する際、ビジネスのタイプや現状の満足度レベルに応じて、適切な指標や質問を選択することが重要です。
BtoBビジネスの顧客満足度調査
BtoBのビジネスでは、顧客との長期的な取引関係や、複数のステークホルダーとの関係性を考慮する必要があります。BtoBの顧客は、多くの場合、長期的な契約や取引を行うため、信頼関係の構築や維持が非常に重要です。また、意思決定の過程が複雑で、多くの関係者が関与することが一般的です。
BtoBの顧客満足度調査の実施方法について、以下のページで詳しく説明していますので、BtoBビジネスの方は、こちらもあわせてご覧ください。
BtoBの顧客満足度調査(CS調査)の重要性とその実施方法
BtoCビジネスの顧客満足度調査
一方、BtoCビジネスの顧客満足度調査では、消費者行動や購買動機などについても理解することが重要です。これにより、より具体的なマーケティング戦略を策定することが可能となります。たとえば、商品・サービスの購入・利用状況やライフスタイル、属性などについても詳しく聞いておくと、ターゲット顧客像を高い解像度で描いて理解できます。
(例) 商品・サービスの購入・利用状況に関する情報
- 利用回数や料金などの具体的な利用実態
- 情報源
- 購入のきっかけや選択理由
- 意思決定者など購入時の意思決定状況
まとめ
顧客の声を正確にとらえ、その声をビジネスの成長へとつなげることは、企業の持続的な成功の鍵です。顧客満足度調査は、そのための重要なツールとして位置づけられています。
顧客満足度調査では、NPS、総合満足度、継続利用意向といった全体的な取り組みの成果をみる総合指標と、改善のためのマーケティング施策を考えていくためのより具体的な指標で、現状のパフォーマンスを確認します。
そして、顧客満足度調査の分析においては、全体像を俯瞰したうえで重要なポイントに的を絞っていくという基本方針のもと、クロス集計や満足度の重要度を特定するキードライバー分析を通じて、自社の強みや弱みを明らかにします。
調査結果をもとに自由回答で得られる顧客の「生の声」にもしっかりと耳を傾けながら、商品やサービスの改善のための具体的な改善計画(アクションプラン)を策定して、ビジネスの成長という成果につなげていくことができます。
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