市場調査を実施する際にWeb回答調査方式で実施する割合が増えています。
コロナ禍では、対面からオンラインへと、調査手法の移行が一層加速した感があります。

市場調査の手法には、訪問面接調査、郵送調査、電話調査、Webアンケートなどがあります。
訪問面接や郵送といった従来型の調査手法に慣れた方にとっては、Webアンケートでも同じような結果が出てくるのか?Webアンケートの結果は信頼できるものなのか?という不安であることでしょう。

一方、初めての市場調査がWebアンケートとなる方では、Webであること以前に調査の品質の良し悪しをどう見極めればよいのか?お悩みのことでしょう。

私自身がWebアンケートを利用する立場として、これまでの経験を通じて体感してきたWebアンケートのメリットとデメリットについて説明します。

Webアンケートのメリット

まず、Webアンケートのメリットについて以下の各点をあげることができます。

質問数の多い調査も実施可能

良くも悪くも調査慣れしている登録モニター対象のWebアンケートでは、結構なボリュームの調査でも実施することができます。調査対象者の負担をできるだけ少なくするように工夫すれば、回答するのに30分を超えるような調査でもしっかりと回答してもらえるでしょう。

比較的短期間に回答を集めることができる

特別に難しい調査でない限りは、金曜日の夕方から実査を開始して、週明けの月曜日にはローデータが仕上がってくるというのが一般的なパターンです。出現率や協力率が著しく低い層を追いかける必要がある場合には、実査期間を1週間とか10日間に拡大することとなります。
2週間~1か月くらいの実査期間を見ておく必要がある訪問面接調査や郵送調査に比べると、Webアンケートでは極めて短期間に必要なデータを回収することができます。

他の手法に比べると、実査費用が安い

調査にかかる費用を有効な回収数で割った「1票単価」という考え方があります。
実査費用を1票単価で比べると、Webアンケートは訪問調査のだいたい1/10~1/5程度と考えてよいでしょう。

大規模調査の実施も可能

1票単価が安い分、従来に比べて大規模な調査をすることができます。従来の半分の費用で、倍以上の規模の調査を実施することも可能です。

ターゲットを絞った調査を実施することができる

もう1つ忘れてはならないのが、モニターパネルを利用したWebアンケートでは、ターゲットを絞り込んだ調査を実施できるということです。
上手に的を絞って調査を行うことができれば、非常に精度の高いデータを得ることができますので、これはとても重要なポイントになります。

Webアンケートのデメリット

一方で、Webアンケートのデメリットとしてよく指摘されるのは以下のような点です。

  • 登録モニターは、日本人のごく一部の人なので、サンプルに偏りがあるのでは?
  • 従って、調査データの信頼性に不安がある?

つまり、調査対象者を無作為抽出して実施する従来型調査に比べて、インターネット調査会社に登録したモニターから対象者をリクルートするWebアンケートでは、代表性のあるデータを得ることができないのではないかという懸念です。

しかし、データの代表性は従来型の調査でも頭を悩ましている問題です。
近年は、在宅率の低下、プライバシー意識の高まりから、調査への協力率が低下しており、抽出段階でのサンプルの属性と回収サンプルの属性とが大きく違ってきています。

従来型調査が直面する現実

以下は、首都圏の自治体で実施した調査の回収状況です。
住民基本台帳から無作為抽出した住民3,000人に対して調査票を郵送し、半分の約1,500人から回答があった郵送調査です。

母集団の性別・年代別構成に比べると、回収サンプルでは女性と年代の高い層の割合が高くなっています。そして、18~29歳と30歳代の男性の協力率が非常に低くなっています。

首都圏の別の自治体で実施した訪問面接調査の回収状況です。
こちらの調査でも同様に、母集団に比べて回収サンプルでは女性と高齢者の割合が高くなっています。また、18~29歳男性の協力率が非常に低くなっています。

以下は総務省が郵送方式(郵送配布、郵送またはメールで回収)で実施した通信利用動向調査の回収サンプルについて、世帯規模の構成比を国勢調査と比べてみたものです。
国勢調査では、単身世帯比率が35%であるのに対して、調査サンプルでは15%と、大きな違いがあります。

オートロックのワンルームマンションに居住する単身者へのコンタクトは非常に難しく、訪問面接調査での単身者割合はさらに低下し1割を下回るレベルになることも珍しくありません。

代表性よりも継続性が信頼性につながる

国や自治体が実施する従来型調査でも、

回収サンプルでは、女性や年代の高い層の割合が高くなる傾向にある
回収サンプルでは、単身世帯の割合が極めて低くなる傾向にある

といった問題が出ています。
調査対象者を無作為抽出したからといって、回答データには代表性があり正しいものであるとは言いづらくなっているのが現状です。

そこでポイントとなるのは、従来型調査とWebアンケートとで調査結果にどのような違いがあるのか?ということです。
この点については、国や大学などの研究機関、市場調査の業界団体などで様々な検証を重ねてきています。

それらの先行研究の知見をざっくりとまとめると以下のとおりです。

  • 個人情報保護への関心の高まりやオートロック式の高層マンションの増加などにより非回答割合が高まる中、従来型調査ならではの特徴である代表性は失われつつある。
  • 従来型調査とインターネットモニター調査とを比較した場合、インターネットモニター調査では、満足度などの意識設問において低めの評価となるものの、実態を問うものや、経験や行動を問うものなどでは、調査手法による差が生じない設問もある。
  • 従来型調査とインターネットモニター調査との回答の差をもたらす要因としては、サンプリングバイアス(誰が答えるかの違いであり、調査母集団のカバレッジの違いや調査拒否などによる非回答割合の違いに起因するもの)や測定法(紙かWebか、面接か自記式かなど)によるものなどがある。

弊社でも、あるプロジェクトでそれまでの訪問面接調査からWebアンケートへと調査方式を変更したことがあります。その際、訪問面接調査と並行してWebアンケートを実施して、すべての調査項目についてどのような違いがあるのかを検証したことがあります。

検証調査の結果、PCやインターネットの利用率、オンラインショッピングの利用率、情報源としてのインターネットの参照割合など、どうしてもインターネットの存在に引きずられてしまうものを除いて、各種の消費行動・利用実態や生活価値観の指標に大きな差は見受けられませんでした。

「上手にコントロールすれば、Webアンケートでも従来型調査と遜色のない回答データを得ることができる」というのが弊社の見解です。

Webアンケートを活用してマーケティング力を強化する

データの動きから市場の変化をとらえようとすれば、現状では手に入りにくい代表性よりも継続性のほうを重視すべきです。市場調査を定期的かつ安定的に継続して実施していくうえで、大規模のデータを、短期間に、かつ、低コストで収集できるWebアンケートを活用しない手はありません。

強みや弱みを理解したうえで工夫することでWebアンケートを上手に実施できます。
特に「何がどこまでできるのか?」あらかじめ限界を知っておくことが重要です。
一部、既に説明した内容もありますが、インターネット調査会社の調査モニターを対象としたWebアンケートを実施する場合の留意点をいくつか指摘しておきます。

若者を対象とした調査には弱い

意外に思われるかもしれませんが、30歳未満の若い年代のリクルートには苦労することが多いです。
もともと、他の年代に比べてモニター自体が少ないうえに、特に若年男性層はアンケートの依頼にこたえてくれる割合が低いようです。

また、携帯電話などの情報関連の支出や流行の商品・サービスに対する興味関心度合をみると、モニターに登録している30歳未満の若い層はややアクティブ度合いが低い傾向があるように感じています。

アクティブなシニアが多い

高齢者とインターネットは結びつきにくく、高齢者対象のWebアンケートはちょっと・・・と思いがちですが、70歳代以上の回答も結構あり、若年層よりもリクルートしやすい時があります。

また、若年層と反対に、60歳以上のシニア・モニターはネットリテラシーが高く新しい動きにも関心が高い、活動的な人の割合が高い傾向にあるようです。

従って、若年層からシニア層までの全年代を通して見るとちょうどいい具合になります。

質問の量が多いと誤回答が増える

調査全体の質問数だけでなく、一問だけとりあげても質問文が長かったり選択肢の数が多かったりすると、意味を取り違えた誤認回答やテキトーにチェックする不正回答が発生するリスクが高くなります。
選択肢の数を多くても10~15項目程度に絞り込むのが望ましいでしょう。

なお、Webアンケートの利点の一つになりますが、調査モニターは一般の人に比べるとやや多めの質問数にも耐えられる傾向があります。

リストの最初の方にある選択肢が選ばれやすい

調査では最初に見たものや直前に見たものが目に留まり印象に残りやすいと言われています。前者は初頭効果、後者は親近性効果と呼ばれるものです。
Webアンケートでは特に初頭効果が出やすく、選択肢リストの最初の方の項目が選ばれやすいように感じています。
対応策として、対象者ごとに選択肢の並べ方をランダムに表示するランダマイズ機能を活用できます。

当然ながら、インターネット関連の利用率が高い

これは仕方のないことですが、商品やサービスを購入する際に参考にしている情報源を聞くと、インターネット上の情報の参照度が非常に高くなります。
その分、マスコミや口コミの参照度が低くなるわけではありませんので、インターネット関連を除けば、十分に参考にできる情報を収集できます。

スマホでの回答割合が高い

年々、スマートフォンで回答する人の割合が高くなっています。
スマートフォンで回答する人が多いということを意識して、できるだけ答えやすい調査票(調査画面)を設計することを心がける必要があります。
そのうえで、PCやスマホなど、それぞれのディスプレイサイズに適した画面を表示する「レスポンシブWebデザイン」を実装した調査システムの利用もおすすめです。

他にも、モニターパネルの違いによる自由回答の癖など、調査モニターを対象としたWebアンケートを実施する際にはいくつか留意すべきポイントがあります。
そうしたポイントを踏まえて、無駄や無理のないリサーチをデザインすることができれば、インターネットに特化したことがらを除いて、一般的な商品・サービスの利用実態や利用意向、消費ライスタイルなどについては、従来型のリサーチとほとんど差がない情報を収集できます。

Webアンケートの活用と調査実施フロー

当社は、市場調査/マーケティングリサーチの「目利き」として、調査の目的や内容にあわせて最適なインターネット調査会社と組み、調査プロジェクトを組み立てて実施し、使えるデータを生み出しています。

ご参考までに、当社に調査の実施を委託していただく場合の全体的なフローは以下のようになります。

インターネット調査実施委託のフロー

かっちりと計画をまとめる前にご相談いただく方が、ニーズにあわせた最適なプランニングができますので、「市場調査をしようかな」「リサーチをする必要がありそうかな」と思った段階で、お気軽にご相談ください。
相談や見積りだけなら無料です。

Zoomなどのオンライン会議やメール、電話、あるいは対面で、どんな課題があって、どのように解決したいのか、などをじっくりとうかがってリサーチの企画イメージを作っていきます。
当社の場合、この段階で特に重視しているのが「現在地」と「目的地」の確認です。

「現在地」とは、

「いま、〇〇〇について十分に把握できておらず、△△△のような問題があり、困っている」
「□□□を行うにあたり、◇◇◇のようなデータが必要」

といったような情報で、「目的地」は、

「まずは実態把握をして、そこから新商品開発の材料を見つけていきたい」
「○○○の人たちを対象として調査を実施して、商品の問題点を探り、改善策検討の参考としたい」
「打ち出した施策の効果測定をして、次の展開でその教訓を生かしていきたい」

というような情報になります。

乗換案内と同じで、出発地と目的とがわかり、かつ、そこまでにどのくらいの時間と費用をかけてたどり着きたいのかがわかれば、どのルートで行くのが最もよさそうなのかを考えることできます。

こうしたリサーチニーズやリサーチに期待するところを確認するプロセスを経て、調査費用の見積もりを提案します。
費用に納得していただいてGoとなれば、調査票の設計に取り掛かり、その後、実査(実際に調査対象者に回答してもらう段階です)~集計・分析へと進みます。

消費者の興味・関心やライフスタイルが多様化する中、年々、データ活用の重要性が増してきています。Webアンケートを効果的に用いながら、常に変化する市場や顧客の嗜好に関するデータを継続的に追い続け、商品・サービスの開発や改良に活かしていくことができます。

必要なデータを短期間に、かつ、低コストで収集できる「高品質」なWebアンケートを上手に活用して、市場調査の情報をビジネス上の意思決定にお役立てください。

お気軽にお問い合わせ・ご相談ください044-271-6043営業時間 9:00 - 18:00 [ 土日祝定休 ]

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