データ活用は企業経営における最重要課題の1つです。

企業は、常に変化する市場や顧客のニーズをより正確に把握し、商品・サービスの開発や改良に活かしていくことが求められています。

そのためには市場調査を効果的に実施して、調査結果を有効に活用するための仕組みを作ることが必要です。

これまでに培ってきた経験ノウハウに、市場調査から得られる客観的な情報を加えた三本の矢で、意思決定の精度向上と戦略の成功確率を高めることができます。

勘や経験に頼って、十分な調査をせずに施策を打って失敗してしまうよりも、調査を実施して、そのデータを活用した方が、失敗のリスクを軽減することができ、はるかに精度が高く、効率がよいやり方なのです。

江戸時代の豪商である三井家の家訓に、

「商いは的(まと)のごとし。手前よく調べるときは、当たらずといふことなし」
(商売というのは矢の的のようなものである。こちらがよく調べて臨めば、必ず当たるのだ)

という言葉があります。

これはまさにマーケティング・リサーチのことで、ビジネスにおいては、事前に十分に調査をしておくことが極めて重要であることが説かれています。

また、「不易流行」という言葉があります。
「不易」というのは、いつの時代も変わることのない不変の真理のことで、「流行」とは時代や環境の変化によって革新されていく法則のことです。

事前に十分な調査をすることの重要さは、江戸時代も今も変わることのない「不易」=商い・ヒジネスの本質であり、その活用の仕方は「流行」=時代とともに変わっていくものです。

この十数年の間にインターネット調査が普及し、大規模のデータを、短期間に、かつ、低コストで収集できるようになりました。

n=3,000人の市場調査(40〜50問程度)を全国規模で実施する場合の調査費用の目安。

今では、誰もが「よく調べる」ことで、“豪商”になるチャンスを手にすることができます。

マーケティング・リサーチが「不易流行」なものであることをご理解いただいたところで、ここからは、マーケティング・リサーチについての基本的な事項をおさえたうえで、有効なデータを収集するための活用ノウハウなどについてご紹介します。

<目次>

そもそもマーケティング・リサーチとは?

本題に入る前に、調査については、「アンケート」「アンケート調査」「サーベイ」「リサーチ」「市場調査」「マーケットリサーチ」「マーケティング・リサーチ」など、様々な呼び方があり、それぞれの呼び方について厳密な定義をしているものも見かけます。
しかし、実際に調査を行う場合には、調査の目的や手法の違いを意識することの方がずっと重要で、日本語の呼び方についてはどれでも好きなものを使えばよいと思っています。

それでは、本題にはいります。

「調査をして売り上げは増えるのか?」と聞かれることがあります。

マーケティング・リサーチを正しく行えば、マーケティング活動はより機能しやすくなります。
なぜならば、調査をすることで、今まで見えていなかった顧客のニーズや数字がわかりやすい形で表れてくるからです。
そして、顧客のニーズをより正確に把握することができれば、より消費者に合った商品やサービスを提供することで、顧客に選ばれやすくなり、選ばれ続けて、その結果、継続的に利益を上げるベースを作ることができます。マーケティング・リサーチは地図のようなもの

企業にとって、マーケティング・リサーチは地図のようなものです。調査をすることで、「満足度を上げる」「イメージをよくする」「売り上げを増やす」など、目的地への道筋を読み取ることができます。地図を手にすることで、目的地を目指す気持ちを実際の行動に結び付けることができます。調査結果は社内の共通言語となる

また、調査結果は社内の共通言語になります。マーケティング・リサーチで得られた情報を社内で共有することで、消費者、顧客の情報が社内の関係者全員にわかりやすい形で共有され、消費者、顧客に対する理解が進みます。

マーケティング・リサーチを実施する理由

マーケティング・リサーチを実施することで得られるメリットは、大きく以下の3つになります。人々が求めるニーズの把握ができる

顧客のニーズをより正確に把握することができれば、より消費者に合った商品やサービスを提供することができます。目に見えないものを数値で表すことができる

数値というわかりやすい形で社内に共有されることで、経営層と実務レベルとのベクトルを一致させ、全社一丸となって対策を進めることができます。客観的な実証データを得ることができる

マーケティング・リサーチから得られる客観的な実証データは、マーケティング戦略の策定、実行、再修正というPDCAサイクルのさまざまな局面で重要な示唆をもたらします。
そこから、失敗のリスクを軽減し、打ち手の成功確率を高めることができます。

調査結果を生かせていない原因と対策

しかしながら、調査を実施している多くの企業で、

「調査をしただけで終わってしまっている」
「調査結果が出ても、だからどうなの?となっている」

とお嘆きとの話もよく聞きます。

調査を実施しただけで活用できていないのには、大きく以下のような原因が考えられます。

調査結果を原因は3つ。そもそもの調査精度が低い。優先的に取り組むべき課題を見つけることができていない。数値の背景にある情報を引き出せていない。

原因がわかれば、対策を立てることができます。そもそもの調査精度が低い

企画段階により多くの時間をかけ、調査をする前からある程度結果を予想し、採るべき対策についての仮説を持っておくことが必要です。優先的に取り組むべき課題を見つけることができていない

現状のパフォーマンスだけではなく、重要度も特定できるような調査設計をしておくことが必須です。数値の背景にある情報を引き出せていない

自由記述式の質問で「生の声」を集めて、丁寧に読み取り、分析することで、調査結果の解釈を助けてくれる有用な定性情報を得ることができます。

市場・顧客理解のための基幹調査の骨組みづくり

やみくもに行動しても結果に繋がることはまずありません。
まずは、自社の状況と市場を分析し、しっかりとした土台となるマーケティング・リサーチの骨組みをつくる必要があります。

具体的には、たとえば、ブランディングの推進、ファンベースの構築、消費者理解の徹底などの調査課題を設定します。
そうした課題を解決するために、誰に何をどのように聞くのかといった調査内容を決めるところから、得られるであろう調査結果を予想して、講じるべき対策についての仮説まで用意しておきます。

ブランドイメージ調査、顧客満足度調査、U&A調査から基幹調査フレームを構成する。

全プロセスの中で、調査企画段階の検討に最も時間をかけておくことで、戦略の策定→実行→検証→再修正というPDCAサイクルのさまざまな局面で、調査結果から重要な示唆を得て、マーケティング戦略の成功確率を高めることができます。

マーケティング・リサーチの実施プロセス

主な調査手法

直面している課題に応じて、解決に有効な調査手法は異なります。

顧客満足度(CS)調査

自社や競合他社のお客様の満足度を測定します。
満足度の評価構造分析から、自社の強み・弱みを明らかにして、満足度向上のために優先的に取り組む課題を特定することができます。

ブランドイメージに関する調査

自社や競合他社の商品・サービスについて、認知率や好意度、ブランドイメージの実態を測定します。
ブランド連想やブランドイメージの評価構造分析から、ブランド力・ブランド価値を明らかにすることができます。

広告効果測定

テレビコマーシャルから販促用のチラシまで、様々な広告施策の効果を測定します。
「効かない」広告を特定することで、結果的に「効く広告」への投資効果を高めていくことにつながります。

新商品開発調査

新商品・サービスのコンセプト段階における受容度から、ネーミングやパッケージなどを含めた候補案の絞り込み、市場投入後の使用実態(U&A)・評価まで、顧客目線での情報を収集し、分析します。
消費者の課題意識に根差した新商品開発が可能になります。

ライフスタイル調査

日常の生活行動や価値観、消費実態やメディア接触状況など、消費者のライフスタイルを浮き彫りにします。
商品・サービスのニーズ把握やセグメンテーションによるターゲット層の絞込みができます。

市場・競合分析調査

競合比較にフォーカスし、流出リスク⇔獲得見込みのあるターゲット層のセグメンテーションや商品・サービスの競合ポジションの特定などを行います。
新規顧客獲得につながるプラン策定に有効な情報を得ることができます。

定量調査と定性調査

マーケティング・リサーチには、大きく分けて、定量調査と定性調査の2つのタイプがあります。
定量・定性それぞれのアプローチにはメリット・デメリットがあり、どちらのアプローチを用いた場合にも、どこか、何か足りないところがあり、難しさを感じることがあるでしょう。

定量調査は「数値」で表すのに対して、定性調査では「コトバ」で表す。それぞれのアプローチにはメリット・デメリットがある。

定量・定性の両面からのアプローチで、客観的で網羅的な情報と、深く豊かな情報をバランスよく引き出すことができれば、マーケティング・リサーチで得られた情報が社内の関係者全員にわかりやすい形で共有され、消費者、顧客に対する理解が進みます。

「使えるデータ」を引き出すテクニック

「コトバ」で表す定性的なアプローチは、それこそコミュニケーションそのものです。
調査がうまくいくかどうかは、インタビュアーや分析者のスキルによるところが非常に大きくなります。

定性調査では、経験豊富なインタビュアーと洞察力にすぐれた分析者が、豊かな「コトバ」で表すために必要。

「数値」で表す定量的なアプローチにおいても、客観的・網羅的で、かつ、精度の高い情報を得ようとすれば、質問文のワーディングや回答方法に留意して、ムダやムリのない上手な質問を適切な順序で組み立てていく必要があります。

定量調査では、簡潔でわかりやすいワーディング、無理なく正確にとらえる回答方法、自然な反応を生み出す質問順序が、確かな「数値」で表すために必要。

調査フローはどう組むか

“GeneralからSpecificへ”が調査の基本

まずは答えやすい一般的な質問から始めて、その後で詳細な質問を続けるのが調査の基本です。

ひとつのテーマの中でも、たとえば、「全体としてどのように思いますか?」と全体評価を聞いた後で、「以下のそれぞれについてはいかがですか?」と、深堀用に細かい評価ポイント(詳細項目評価)についての質問を続ける方式が一般的です。

あらかじめ、評価の対象となる事柄についての知識ベースをそろえたうえで、全体評価をしてもらいたい場合など、詳細項目評価→全体評価の順に回答してもらうことがあります。
この方式での回答データを分析してみたところ、全体評価→詳細項目評価の場合に比べて、全体的な質問に対する回答のばらつきが小さく、評価のレベルも低くなる傾向があるようですので、留意が必要です。

全体評価と詳細項目評価の質問順についての2パターン。

調査はコミュニケーションです。
人を相手にする調査は、教科書通りにはなかなかいきません。
基本はあくまでも基本であって、試行錯誤を繰り返しながら、よりよい調査票をつくりあげていくことになります。簡単な調査票のテンプレート

来店者アンケートなど、A4サイズで1ページ程度の簡単な調査票のテンプレートをダウンロードすることができますので、ご利用ください。

サンプルサイズの決め方

世論調査などサンプル調査の信頼性の根拠に「中心極限定理」があります。
簡単に説明すると、「無作為に抽出した標本の大きさが十分に大きければ、母集団データがどのような確率分布であっても、(ほとんどの場合)標本平均の分布は母集団の真の平均を中心とした正規分布に従う」ということです。・・・ちっとも簡単ではありませんが。

要は、母集団の分布は正規分布でなくても、そこから無作為に抽出した標本の平均をプロットすると正規分布に近づくというところがポイントです。

中心極限定理

標本平均が正規分布であれば、母集団の真の平均からの誤差について確率的な推計が可能になるため、サンプル調査でもある程度の幅をもって信頼できる結果が得られるわけです。
そして、どの程度の標本誤差を許容するかによって必要なサンプルサイズも決まってきます。標本誤差

標本誤差は回答比率が50%の時に最も大きくなります。
95%信頼度(100回調査を行えば95回は同様の結果が得られると想定)のもとでは、サンプルサイズがn=10,000人であれば、誤差は±1.0%となり、母集団における真の値は49.0%~51.0%と推定できます。

標本誤差早見表

必要サンプルサイズ

従って、許容できる標本誤差を設定すれば、どのくらいのサンプルサイズが必要になるのかがわかります。

必要サンプルサイズ早見表

調査データの集計・分析

データの前処理~入力・変換・クリーニング

調査の対象者による自記式アンケートでは、記入内容が判読しづらい回答や無回答など、機械的な処理では対応できないケースが少なからず発生します。

機械的な処理では対応できない回答例

また、回答者の条件が設定されている質問に対して条件に該当しない人が回答していたり、回答データ間の矛盾があったりするなどの問題もでてきます。

誤回答や無回答の処理、論理矛盾のチェックおよびクリーニング、複数のデータの回答状況を組み合わせた分析用変数の作成などのデータの前処理を行います。
これにより、生データからできるだけ多くの、できるだけ精度の高い情報を引き出し、データの活用の幅を広げることができます。単純集計とクロス集計

単純集計(GT表)は、全体ベースでの回答者数(実数)や割合(%)を表したものです。
それに対して、クロス集計は、性別/年齢/地域といった対象者属性や他の質問の結果などを掛け合わせて集計したものです。

単純集計、クロス集計の例

まずは、単純集計表を一通りながめて、クロス集計の軸や集計ベースの絞り込みのイメージをふくらませます。

クロス集計表では、掛け合わせた結果の集計軸があまりに小さすぎると、出てくる結果の誤差が大きくなります。
クロス集計の軸がn=50に満たない場合には、あくまでも参考値として割り切ってみることが必要です。ウェイトバック集計

ウェイトバック集計とは、サンプルの構成比が実際の市場(母集団) と異なる場合に、母集団の構成比に合うようにサンプルに重みづけをして、母集団の実態を反映したものにする集計方法です。
使用実態(U&A)調査で把握した商品・サービスの普及率やシェアについての情報から、重みとなるウェイト値を求めることができます。有意差検定

ある調査で、20代女性における自社商品の評価が競合他社より10ポイント高かったとしても、サンプルサイズが小さければ、必ずしも統計的に有意な差があるとはいえません。
見た目の評価差だけで判断するのではなく、有意差検定による確認が必要です。

有意差検定付きのクロス集計の例

多変量解析

クロス集計に加えて、適切な多変量解析手法を活用することにより、調査結果についてより深い解釈ができます。

消費者データの分析に精通したリサーチコンサルタントであれば、調査課題と手元にあるデータや分析手法の限界を十分に認識したうえで、様々なパターンの分析を繰り返して、精度の高い分析結果を得ることができます。

多変量解析については、

「どのようなことができて」
「どのようなときに使える」

手法なのかということを知っておく必要があります。

以下に、マーケティング・リサーチで活用することが多い代表的な手法を4つ紹介します。因子分析

因子分析は、データの背後に隠れている潜在的な要因を見つけ出す分析手法です。
たとえば、多数のブランドイメージ評価データから、「信頼性」「革新性」「親しみやすさ」イメージ因子を抽出するなど、ブランドイメージの分析などでよく利用します。クラスター分析

データをいくつかの類似するグループ(クラスター)に分類する分析手法です。
ターゲット顧客を特定するためのセグメンテーションを行う場合によく利用します。コレスポンデンス分析

似た者同士を近くに配置して、関係性を視覚的に把握する分析手法です。
競合とはひと味違った特徴を打ち出したいとか、ブルーオーシャンを見つけたいといった時のポジショニングを探るのに有効です。
クロス集計表さえあれば分析できますので、一般に公開されている調査結果にも利用できます。重回帰分析

たとえば「最も重視するものを教えてください」とか「○○はどの程度重要だと思いますか」と質問しなくとも、データの関係性から影響度を特定する分析手法です。
認知度や満足度、好意度などを上げたいが、何から取り組めばよいか知りたいという時に活躍します。
また、重回帰式は予測にも活用できます。

多変量解析は、以下のようなマーケティング課題の解決に役立つツールです。

多変量解析でできること。データをより深く解釈し、お客様に選ばれる商品・サービスの改善に役立てたい。有望なターゲットは、どのような人で、どこに、どれだけいるのか知りたい。すべてが中途半端で終わってしまうことのないように、最優先で取り組むべきことを特定したい。

数値の裏側にある情況を読み解く

多くの場合、平均点や%の数値だけからは、消費者が抱える問題点やニーズについて明確にとらえることはできません。

評価理由を自由記述方式で答えてもらい、その情報を分析することにより、数値の裏側にある感情を読み取り、理解することができます。

たとえば、推奨意向に続けて、以下のような回答欄を用意して、「そのように評価した理由を、具体的なエピソードなどもまじえて教えてください。」と依頼することにより、より個別具体的な経験をともなった情報を引き出しやすくなります。

数値の裏側にある情報を引き出すための自由回答質問

テキスト分析でお客様の声を定量化する

自由回答質問ではお客様である消費者の生の声を聞くことができます。
手間を惜しまず個々のコメントを読み込むことで、有益なインサイトが得られることも少なくありません。

定性的な情報である自由回答のコメントはそれ自体でも貴重な情報ですが、もっと有効活用できます。
たとえば、類似した回答を同一カテゴリーに分類してコード化(アフターコーディング)することで、定量データとして集計や分析を行うことができます。

また、共起ネットワーク分析やクラスター分析などのテキスト分析を行うことにより、総合満足度や推奨意向などの数値の裏側にある感情を構造的に解釈することも可能です。

アフターコーディングやテキスト分析で、定性的な情報であるお客様の声を定量化・構造化することができる。

<ご参考>
ご紹介した集計・分析等に関する各サービスの料金は以下の通りです。

集計・分析等に関する各サービスの料金表

まとめ

冒頭で、「マーケティング・リサーチは地図のようなもの」とお話ししました。

正確な詳しい地図を描くには、まずは視野を広くとって、それこそ「すべて」を見てやるつもりで全体を俯瞰したうえで、気になるところを周辺から固めていくのが有効です。

情報を集めずに考えて出した結論は精度が低いものです。
いろいろ推測したり、想像したりする前に、まずは下調べをすることが重要です。

マーケティング・リサーチの実施に際して一番のポイントとなるのは、調査票の設計を含む調査企画部分の検討に十分な時間をかけることです。
そして、定量と定性をうまく組み合わせて実施することで、客観的で網羅的な情報と、深く豊かな情報をバランスよく引き出すことができます。

また、過去に実施したアンケートでの自由回答や、お客さまセンターに寄せられるお問い合わせやクレームなども有用な情報となるでしょう。
新たに調査をする前に、スモール・スタートとして、それらの社内に埋もれたままになっているカスタマーボイスを活用して、経営資源とすることから、データ・ドリブン経営をはじめることができます。

グルーブワークスのリサーチコンサルタントは、マーケティング・リサーチを御社の武器にするために、半分“中の人”のような立ち位置で協働いたします。