それぞれの物語の裏にある数字を見ようとすることは大切だ。
でもそれと同じくらい、数字の裏にある物語を見ようとすることも大切だ。
数字を見ないと、世界のことはわからない。
しかし、数字だけを見ても、世界のことはわからない。

ご紹介したのは「ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド (2019) 『FACTFULNESS-10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(上杉周作、関美和訳) 日経BP社.」の中に出てくる一節です。

リサーチの言葉に置き換えると、

数字=「数値」で表す定量的な情報
物語=「コトバ」で表す定性的な情報

ですね。

定量・定性それぞれのアプローチにはメリット・デメリットがあり、どちらのアプローチを用いた場合にも、どこか、何か足りないところがあり、難しさを感じている方も多いものと思います。

定量調査は「数値」で表すのに対して、定性調査では「コトバ」で表す。それぞれのアプローチにはメリット・デメリットがある。

定量的なリサーチでは、評価理由を自由記述方式で回答してもらうことにより、評価理由の背景に迫ることができます。

デプス・インタビューなどの定性的なリサーチについても、仮説探索を目的として実施される限り、上にあげたようなデメリットはさほど問題になりません。
しかしながら、定性的なアプローチでは、せっかく得られた仮説を検証する際の代表性や客観性の面で力不足と言わざるを得ません。

では、どうすればよいのでしょうか?

定性的なアプローチで足りないところは定量的なアプローチで補うことをおすすめします。
具体的には、デプス・インタビューから導き出された仮説について、インターネット調査で自由回答を集めて、テキスト分析を行います。
一般の消費者対象であれば、n=1,000人のインターネット調査であっても、さほどコストをかけずに実施することができます。
自社の顧客のように限られた対象者層であっても、n=100以上のサンプルがあれば、性別や年代別など属性別の分析もある程度可能でしょう。

仮説検証のための分析方法は、①アフターコーディングによる分布確認と②共起ネットワーク分析などのテキストマイニングが有効です。

① アフターコーディングによる分布確認
すべての自由回答を丁寧に読み込み、類似したコメントを同一カテゴリーに分類します。
分類結果は定量データとして集計・分析を行うことが可能となります。
これにより、コメント内容の全体的な構成比や、個々のコメントカテゴリーの出現率を客観的な数値で把握することができます。

② 共起ネットワーク分析などのテキストマイニング
共起ネットワーク分析では、自由回答中に出現する単語と単語が同時に出現する関係性を把握することができます。
たとえば、注視しているベネフィットにつながるキーワードにはどのようなものがあるかとか、ターゲット層ではどのようなキーワードが多く出現しているか、などを直感的にとらえることができます。

アフターコーディングやテキストマイニングにより、自由回答の記述内容を定量的に把握することで、個々のコメントを読み込むだけでは掴みづらい全体構造やセグメント別の違いなどについて、客観的で有用な情報を引き出すことができます。

アフターコーディングやテキスト分析などにより、自由回答の記述内容を定量的に把握できる。

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