より高いステージの顧客満足を目指す

業界で評判の良い企業であれば、それこそ80%、90%といった高い満足度が得られていることと思います。
そうした「優良」企業が、強みをさらに強化してより高いステージの顧客満足を達成するために実施する顧客満足度調査の考え方をご紹介します。

満足度調査の目標は顧客ロイヤリティ

顧客満足はあくまでも通過点で、究極の目標は顧客ロイヤリティです。

より高いステージの顧客満足は、「もっと長く利用する(継続利用)」「もっと多く利用する(利用拡大)」「利用することをすすめる(推奨意向)」といったロイヤリティの高い顧客行動に結びついていきます。

単に満足してもらうのではなく、製品やサービスを利用し続ける、より多く利用する、他の人にすすめることで、売上の維持・拡大を支えてくれる顧客基盤を強化拡大していくために顧客満足度調査を実施します。

「狩野モデル」という考え方

優良企業の満足度調査結果をひとことでまとめると、「品質は良いが、価格が高い」に尽きるケースがほとんどでしょう。
調査結果を受けて、「満足度をさらに高めるために価格を見直そう」というのは、おすすめできる対応策ではありません。

お客様の求める製品・サービス品質と満足度の関係を示した「狩野モデル」という考え方があります。

【狩野モデル】

狩野モデル

たとえば、総合満足度と要素Aの評価の関係をプロットして以下のような形になっていれば、要素Aは「当たり前品質」要素で、ある程度の基準をクリアしておけば十分と考えられます。

当たり前品質

価格が「当たり前品質」である場合(実際、そうしたケースが多いのですが)、満足度が高い優良企業が価格に手を付けても、満足度をさらに押し上げるほどの効果が得られないことになります。
逆に、高品質の製品・サービスを持つもののみに許されるプレミアムなブランドイメージを損なうことになりかねません。

既に満足度が十分に高い場合は、上で紹介した狩野モデルの図にある「魅力的品質」(不充足でも特に不満ではないが、充足されれば満足)要素を見つけると、満足度をさらに押し上げていくことができます。

狩野モデルを応用したアンケートでは、以下のような質問セットがよく使われているようです。

充足質問・・・これがあるとどう思いますか?
不充足質問・・・これがないとどう思いますか?
選択肢・・・気に入る/当然である/何とも感じない/仕方ない/気に入らない

不充足質問に対して「何とも感じない」、充足質問に対して「気に入る」とする割合が高ければ「魅力的品質」と判定するわけです。
「これが」にあたる項目を上手にリストアップできればうまくいくのかもしれませんが、かなり難易度の高い課題です。

「魅力的品質」要素を見つける

当社がおすすめしているのは総合評価理由の聞き方を工夫する方法です。
通常は、

〇〇〇についてそのように思われるのはどういったことからでしょうか。具体的に教えてください。

と聞くところを、優良企業の満足度調査では、

〇〇〇について気に入った点や、ここをもっとこうしてほしいとお考えの点がありましたら、具体的に教えてください。

と聞くようにします。
通常の聞き方だと「特に問題はありません」とか「いつもありがとうございます」と書いて終わりになるところを、満足をベースにさらなる改善アイデアを書いてもらうわけです。

ここが重要なポイントになりますが、満足度の評価方法を「どちらともいえない」を含まない4段階評価にして、満足/不満足を明確に表明してもらうようにします。
優良企業の場合、満足の評価がほとんどのはずです。回答するお客様としても、まずは「気に入った」点を誉めたうえでの提言ですので、前向きで建設的な意見がでてきます。
また、「気に入っているけど、この点はどうしても看過できない」という満足のボトルネックになっている不満点を伝えてくれます。

同じ自由記述方式のコメントでも、この質問方式で寄せられるコメント内容は読みごたえがあり、じっくりと読み込むだけでも大変参考になるはずです。
さらにコメント内容をアフターコーディングして、「気に入った点」と「ここをもっとこうしてほしい」をクロスしてみると、「どういった強み」を「どのようにすれば」さらに強化することができるのかヒントが見えてきます。

「気に入った点」と「ここをもっとこうしてほしい」をクロスしてみる

ロイヤル顧客から学ぶ

満足度と継続利用意向の評価レベルをクロスして、満足度と継続利用意向の両方とも高い「ロイヤルユーザー」、満足度または継続利用意向のいずれか一方のみが高い「ロイヤルユーザー予備軍」、満足度と継続利用意向の両方とも低い「流出可能性あり」の3つのセグメントに分類します(ロイヤリティセグメンテーション)。

ロイヤリティセグメンテーション

ロイヤルユーザーと他のセグメントで違いが大きいところやロイヤルユーザーならではの評価理由から、より高いステージの顧客満足を実現するヒントを読み取っていきます。

強みをさらに強化するための顧客満足度調査の実施方法

強みをより強化したい方のご参考になるよう、必要なサンプルサイズ、記名式とするかどうか、謝礼は必要かなど、優良企業のための顧客満足度調査の具体的な実施方法をご紹介します。

サンプルサイズ

少なくともn=1,000以上を対象としたいところです。
協力率を30~40%程度と想定すると、n=1,000対象でもn=300~400ベースでの集計・分析が可能になります。

ちなみに、自治体が市民を対象として実施するアンケートの協力率がだいたい40%程度です。途中ではがきによる督促を行うと50%程度になることもあります。一方で、団体などが会員を対象として実施するアンケートでは協力率が数パーセント程度のものも見かけることがあります。
顧客との関係が良好な優良企業であれば、30~40%程度の協力率を見込むことができます。

調査対象者

製品・サービスの利用者と購入者とが異なるBtoBの場合は、顧客サイドの担当者と意思決定者が調査対象の候補です。
BtoCでは購入者・登録会員=利用者として想定してよいケースがほとんどでしょう。

調査項目

調査項目として必ず入れておきたいのは以下の3つです。

  1. 満足度レベルを把握するための項目
  2. 製品・サービスの利用実態を把握するための項目
  3. 回答者の属性を把握するための項目

そして、それぞれの具体的な質問項目例は以下のとおりです。

①満足度レベルを把握するための項目
  • 総合満足度
  • 製品やサービスに関する詳細項目別の満足度
  • 推奨意向
  • 継続利用意向

このうち、総合満足度については、先にご紹介した「魅力的品質」要素を見つけるための自由回答質問を続けます。

②製品・サービスの利用実態を把握するための項目
  • 利用回数
  • 他社製品・サービス利用状況

評価の高い製品・サービスについては、より詳しい知識を得て機能・性能を最大限に引き出して使いこなしたいという強いニーズがありますので、様々な機会・媒体を通じた情報提供に関する実態・意向を把握するための質問を盛り込むこともおすすめです。

また、新しい製品・サービスのアイデアを見てもらってどの程度の需要があるのかを調べる質問を入れてみるのもよいでしょう。

③回答者の属性を把握するための項目

調査は、記名式で実施することをおすすめします。
回答データと自社で保有する顧客データを紐づけて集計・分析することができますので、調査票には回答者の部署名・お名前記入欄を設けておくだけで十分な場合があります。
満足度調査は、顔が見える一人ひとりの顧客の「生の声」に出会える機会です。

調査方法

基本は郵送でインターネット併用も可能とする郵送&Web併用方式をおすすめしています。
デジタルに対する得手・不得手を問わない郵送調査のカバレッジの広さとインターネット調査の手軽さの両方のメリットを併せ持つため、郵送調査のみで実施する場合に比べると協力率が高くなります。

コロナ禍でオンラインへのシフトが進み、直近では郵送のみの場合に比べて10%くらい協力率が高くなるケースもあります。とはいえ、全体の回収数に占めるWeb回答の割合は高くても20~30%くらいですので、やはり郵送調査がメインです。

郵送調査では、調査への協力依頼状(お願い文を調査票の冒頭に記載する場合もあります)、調査票、返信用封筒を1セットにして対象者宛に郵送します。
協力依頼状にWeb回答用のURLやQRコードを印刷しておき、その情報からWeb回答画面にアクセスしてもらいます。自社サイト内にWeb回答画面への入口ボタンを設置しておいてもよいでしょう。

締め切りまでの毎日の回答状況をモニターし、回答数が伸び悩んでいるようであればタイミングを見計らってリマインダーを行ったり、訪問予定の顧客からの回答があれば営業担当者と回答内容を共有したり、常に顧客とのコミュニケーションが動いているようにして調査を一層有効活用することができます。

集計・分析

調査票の表紙右上には対象者ごとに異なる「整理番号」を印字しておいて、Web回答の際にもその番号を入力したうえで回答をはじめてもらうようにすると、郵送/Webを問わず「入力番号」をキー変数として、回答データと自社保有の顧客データをマージすることができます。
顧客ごとの利用・購入の品目、金額、頻度、セミナー・研修参加実績などの実績・行動データと満足度調査での気持ちデータを結び付けて分析します。

調査協力へのお礼

調査で寄せられた意見・要望をしっかりと受け止めてよりよい製品・サービスを提供していくことが最大のお礼になりますので、基本的に金銭的な謝礼は不要です。
調査結果がまとまったところで、簡単なサマリーをまとめてお礼状とともにお届けするのがよいでしょう。
調査を通して、製品・サービスの使用方法などについての質問が寄せられているようであれば、他のユーザーの先進的な活用事例集なども一緒にお届けすると喜ばれるものと思います。

「強みをさらに強化する顧客満足度調査」実施事例(A社様)ご紹介

A社様実施調査の概要

[調査対象者]
お取引先のご担当者と意思決定者、それぞれn=1,000ずつ。

[調査方法]
郵送調査とWeb調査の併用方式

  1. 記名式調査とし、調査票にはあらかじめ企業名とID番号を記載し、部署名、氏名を自記入いただくようにした。
  2. 調査への協力依頼状、調査票(A3サイズを2つ折りにしたA4サイズ両面4ページ)、返信用封筒(当社内アンケート実施事務局宛、料金受取人払い方式)を角2封筒に封入して発送した。
  3. 発送~回収締め切りまでの期間を3週間とし、督促は実施しなかった。

[協力率]
調査への協力率は約40%であった。なお、過去の調査に比べ10ポイント程度高い回収率であったが、これはWeb方式併用効果によるものと思われた。

経緯

A社様では、年1回、取引先を対象とする満足度調査を実施されてきました。
新たな知見を導入したいということで当社にお問い合わせいただきました。

企画ご提案まで

[満足度調査の専門家としての知見を踏まえた企画提案]

A社様から過去調査のレポートをご提供いただき拝見しました。
その結果、これまでも非常に高いレベルの満足度評価を得ており、さらにホームページなどで公開されている企業理念や製品・サポート体制の強みなどの情報に鑑みても、通常のアプローチでは引き続き高い満足度であることの確認のみにとどまる可能性があることがわかりました。
そこで、より高いステージの顧客満足を目指す「強みをさらに強化する顧客満足度調査」の考え方をベースに調査の項目と形式を組み立てた企画を提案させていただきました。

調査の実施準備

[機密情報保護]

調査の実施にあたり、秘密保持契約(NDA)を締結しました。
そのうえで、満足度調査の対象となるお取引先の宛先情報に加えて、調査での仮説検証に必要となる取引実績や属性などの情報を吟味してご準備いただきました。

  • 顧客情報を取り扱う調査の実施に際しては秘密保持契約(NDA)を締結します。また、当社はプライバシーマーク付与認定を受けておりますので、個人情報の取り扱いにつきましてもご安心ください。

調査の実施(実査)

[調査はコミュニケーション]

ご提供いただいた情報をもとに宛先情報を確認した後、対象者IDを付番して調査対象者リストを整理しました。
そして、リストをもとに宛名シールやID入り調査票等の調査物品を作成のうえ、当社内にて調査票等の封入・封緘を行い、最寄の郵便局から発送しました。

当社オフィス内にアンケート事務局を開設

実査期間中の毎日、郵送で回答記入済調査票が届いた/Webで回答があった分を回収状況として調査対象者リストに記載し、A社様にご報告しました。
また、Web回答についてはリアルタイムで回答結果のグラフなどをご覧いただけるサイトを用意しご案内しました。リアルタイム回答結果については、調査の対象となったお取引先様との面談に備えて具体的な回答内容を参照されるなどしてご活用いただきました。
他にも数件ですが、面談用に郵送回答内容をご参照されたいとのご要望もあり、回答記入済の調査票をスキャンしたPDFファイルをお届けいたしました。

  • 満足度調査は、顧客とのコミュニケーション機会でもあります。クライアント企業様が顧客ニーズに素早く対応していただくことができるよう、当社といたしましても迅速かつ柔軟にお手伝いいたします。

調査データの入力

[お客様の生の声を聴く]

回答記入済調査票も機密情報ですので当社内にてデータ入力を行いました。
入力と並行して、当社のリサーチャーがすべての自由回答を読み込み、具体的な顧客ニーズについて理解を深めました。この段階で「体感」した情報をもとに集計・分析のイメージを描き、A社様とディスカッションを行い、集計・分析方針を決めました。

集計・分析

[ワンブレイン・アプローチ]

回答締め切り前までに、集計プログラムを作成しテストランを行っていましたのですぐに集計にとりかかることができ、回答締切の2~3日後に、第1報の調査結果としてクロス集計結果をA社様にお届けしました。
さらにデータの分析と解釈を進めて、回答締切の1週間後には第2報として分析レポートのたたき台をお届けしました。
その後、たたき台をもとにA社様とディスカッションを行い、最終レポートをとりまとめました。
調査票は4ページでしたが、レポートは企画段階での仮説の検証結果、分析時に出てきた新たな視点での考察も入れて100ページを超えるものになりました。

  • すべての自由回答に目を通しているからこその分析視点があります。
    当社の方針として、担当リサーチャーが、調査票の設計から回答データの入力・確認、自由回答の読み込みなどのすべてのプロセスにかかわります。当社ではこれを「ワンブレイン・アプローチ」と呼んでいます。
    ワンブレイン・アプローチによって、集計結果は単なる数字ではなく、調査の対象となるお客様について生の温度感を持った分析ができるところが、当社の特徴であり強みであると自負しています。
    分業体制とは異なり数をこなすことができませんが、一つひとつの調査の質にこだわり熱意をもって取り組ませていただいております。

調査結果の展開

[コミットメント]

社長様、営業やマーケティング部門の責任者様などのA社様のトップリーダーの方々と調査結果を共有し、それをもとにした取り組みの方向性についてディスカッションするZoomセッションを行いました。
社長様はじめ皆様が事前にレポートをしっかりと読み込まれたうえでご参加くださいましたので、単なる調査結果の報告にとどまることなく、改善策について有意義なディスカッションを行うことができました。A社様からも「満足度調査のプロと意見を交わし、非常に充実したディスカッションができた満足度の高い報告会であった」とのお言葉をいただくことができました。

  • 顧客満足度調査を行うということは、お客様に対して、「私たちはよりよい製品・サービスをご提供できるよう努力しています」と約束していることに他なりません。満足度向上に取り組む経営トップのコミットメントが顧客満足度調査を成功に導いてくれます。

強みをさらに強化するための顧客満足度調査に興味がある方は、お問い合わせボタンからご連絡ください。