商品開発と市場調査、そして消費者インサイト

商品開発と市場調査、そして消費者インサイト

商品開発と市場調査

商品・サービスの開発から、集客、顧客維持へと続くプロセスで、市場調査を活用してポテンシャルを見極め、有望なアイデアに開発資源を集中していくことができます。

「市場実態把握」「インサイト探索」「ニーズ理解」から始まる商品・サービスの開発プロセス

商品・サービス開発の起点となる「市場実態把握」「インサイト探索」「ニーズ理解」は、開発の方向性を定めるうえで特に重要な課題ですが、これらを実施するのは結構大変です。

  • アンケートなどを取り、「こういった商品なら欲しい」といったデータが欲しい
  • 新商品を開発、発売するにあたって、現状どんな商品がどんな人に売れているか、どういう風潮なのか、市場調査を行っていきたい
  • 新商品を打ち出す際に、市場に合った商品を出せているか不安を感じる。新商品を打ち出した後も、本当にその商品でよいのか不明点が多くある。売れていなくて終売になった商品がなぜ売れなかったのかを詳しく調べていないため、次につながる動きができていないのではないかと感じる

上記は、弊社にお寄せいただくお問い合わせの例ですが、ご自身でWeb上の情報などを調べて「自分としては、グループインタビューがよいと思う」と続ける方もいます。

私は、2000年代のはじめころ2~3年間にわたって、当時担当していたクライアントさんのプロジェクトで、全部で20~30くらいのテーマについて合計150グループくらいの「インサイト探索」を目的としたグループインタビューにかかわった経験があります。「インサイト探索の草分け」的なプロジェクトですが、その時の経験から得たのは、グループインタビューでのインサイト探索には以下の3つが不可欠であるということです。

① 経験豊富で洞察力に優れたモデレーターと分析者

定性調査をすれば、自動的にインサイトがでてくるわけではありません。インタビューの時間よりも、インタビュー後に「なぜ?」を考える時間の方が圧倒的に長くなりますので、モデレーターには密度の濃い情報を掘り下げて聞き出せる力量が求められます。

② 消費者のことをもっとよく理解したいというクライアントの熱意と根気

「なぜ?」を考えるのは、目に見えないインサイトを手探りでつかもうとする作業です。「これ以上はムリ、この辺でいいかな」と妥協しそうなところで、熱意と根気が「もう少し」の深みにインサイト探索チームをひっぱっていく力になります。

③ そして何よりも、豊富な予算

優秀なモデレーターを起用して実施するグループインタビューの費用はとりわけ高額になりがちで、予算の要素は極めて高いハードルです。そのため成功体験を持つ一握りの大企業を除いて、多くの企業が気軽に活用できる手法ではありません。・・・でした。

「・・・でした。」と付け足したのは、これまで述べてきたことはビフォー・コロナの話だと考えるからです。

コロナ禍でテレワークが一気に進むなかで、今、定性調査のオンライン化が進みつつあります。

「オンライン・グルインにグループダイナミクスを期待できるのか?」という疑念は残るものの、少なくとも調査費用の面では、従来型のオフラインの定性調査に比べると割安感がでてきています。

オンライン化の追い風を受けて、今回は、インターネット調査を利用して、「消費者インサイト」を定性・定量の両面で捉えていくアプローチを提案したいと思います。

消費者インサイトとは何か?

まずは、「消費者インサイトとは何か?」の定義からです。

「インサイト」について、いろんな人がいろんな言葉で定義していますが、私は、「インサイト」とは、

自分では気がついていなかったり、気づいていてもそれを出すことがためらわれたりするホンネ

であって、「消費者インサイト」は、

特定の商品やブランドを買う・利用する理由となる、消費者の心の奥深くに存在する感情やニーズ

のことであるとの定義がよいように思います.

消費者インサイトへのアプローチ

では、どうやって「消費者インサイト」に近づいていくか?

2010年代に入ってから、“AskingからListeningへ”が、調査の世界での流行語の一つになっています。

調査をする側が知りたい内容を質問に落とし込んで、調査対象者から聞き出していく(=Asking)形である従来型のリサーチでは、利用実態など顕在的な事実を捉えることはできても、潜在的なニーズやその奥底にあるインサイトをあぶり出すことが難しいとして、消費者のSNSでの投稿やWeb上の行動履歴を取得したり、日常のありのままの生活を観察したりするなど、観察・計測(=Listening)した情報を分析することが増えてきています。

しかしながら、Listening型のリサーチについても、膨大なデータを分析する難しさや対象者属性を把握することの難しさなどが指摘されています。

Asking型リサーチとListening型リサーチ

要は、AskingもListeningも“帯に短し襷に長し”というわけです。

そうであるならば、対象者の属性を特定することができるというAsking型リサーチのメリットを活かしつつ、潜在意識まで掘り下げることができるというListening型リサーチの強みも取り入れながら、消費者インサイトに迫っていくアプローチが効果的です。

具体的には、以下の3段階のステップになります。

① U&A+消費者ニーズ探索調査で潜在ニーズを見つける

U&A(※1)に、消費者ニーズを定性的に探索して分析するための、エピソード記述質問を盛り込みます。

具体的には、自社の商品やサービスに関連する生活分野のリストを提示して、対象者が現在感じている不満や不都合を選んでもらいます。そして、対象者が「最も面倒だと感じたり、困ったりしていること」について、具体的なエピソードを交えて記述してもらいます。

U&Aで不満や不都合を抽出するエピソード記述法

※1 U&Aについては「マーケティング活動に不可欠な市場・競合分析調査の具体的な方法」を参照してください。

エピソードなどが記述された定性情報について、アフターコーディングやテキスト分析を行い、消費者が解決してほしいと感じている問題=「未充足ニーズ」を類型化、構造化し、さらにそれを定量的な情報にも変換します。

顧客セグメント別に、類型化した「未充足ニーズ」の出現割合を集計し、ターゲットとする顧客セグメントで強くあらわれるものから優先して、不満・不都合の背景要因を想定して、解決のための実現方策(アイデア)を検討していきます。

アフターコーディングによる定量化

② アイデアスクリーニング調査+グループチャットで有望なアイデアに絞り込む

検討を通じて未充足ニーズの解決につながるアイデアをできるだけたくさんリストアップした後、インターネット調査を行い、次のステップへと送り出すポテンシャルの高い有望なアイデアの絞り込みを行います。

「① U&A+消費者ニーズ探索調査」の対象者(※2)のうち、ターゲットとする顧客セグメントに属する人を対象として調査を実施するのが一番効果的ですが、ターゲット像から大きく逸脱しないのであれば、メルマガの購読者やポイント会員登録者、あるいは自社の社員(とその家族)を対象とした調査も可能です。

※2 「① U&A+消費者ニーズ探索調査」の段階で、フォローアップ調査への参加意向を確認しておきます。

アイデアの数が多い場合、まずは定量的なスクリーニングを行います。

ここでのポイントは、深く考え込んで回答してもらうのではなく、直感的に「いい!」「欲しい!」「イマイチ」と反応してもらうことです。

たとえば、とりまとめたアイデアをフラッシュカード形式にしてランダムに表示し、以下のようなスライドバー方式の0~100点のスケールで評価してもらう方式が有効です。

アイデア・フラッシュカードを見たうえでのスライドバー評価方式

アイデアの数が10個程度くらいまでであれば、ターゲットとする顧客セグメントに属する「① U&A+消費者ニーズ探索調査」の対象者のうちクリエイティブな人を7~10人程度リクルートして、グループチャットをしてもらいます。

上で紹介したのと同様のフラッシュカードをみてもらいながら、第一印象や評価、なぜよいのか/悪いのかの理由を書き込んでいってもらいます。

対象者の反応をみながら、有望なアイデアについては掘り下げて聞いていくことで、求めるインサイトに近づいていくことができます。

オンラインも含めたグループインタビューの場合とは異なり、お互いの顔が見える対面会話ではない分、チャットではリラックスして本音が出やすいとされています。

③ コンセプト(&プロダクト)調査で「欲しい」商品に仕上げる

少数の有望な候補に絞り込んだら、新商品アイデアのベネフィットを的確に伝える説明コンセプトを開発します。

そして、「① U&A+消費者ニーズ探索調査」の対象者のうち、ターゲットとする顧客セグメントに属する人を対象としてインターネット調査を実施して、コンセプトを評価してもらいます。

ここで使用するコンセプトは、調査用のコンセプトであることが重要なポイントです。調査に用いるコンセプトには以下の3つの要素を過不足なく含むようにします。

  • 「これ、いいかも!」と消費者の関心をひきよせる消費者インサイト
  • 「・・・ができる」「・・・になる」という新商品アイデアが消費者に提供するベネフィット(便益)
  • 「なぜならば、・・・だから」と、ベネフィットが確実に得られることのRTB(Reason to Believe:理由付けとなる根拠)

クライアントサイドでコンセプトをつくると、思い入れが強すぎてついアレもコレも詰め込みがちのようです。調査用コンセプトの作成は、新商品アイデアの内容と調査対象者の性質の両方を熟知した調査会社に任せるのが賢明です。

調査では、コンセプトをよく見てもらったうえで、新商品の魅力度や価格、購入意向について評価してもらいます。

そして、調査結果をもとにコンセプトをブラッシュアップして、思わず「これ、欲しい!」と言ってもらえる商品に仕上げていきます。

実は、最初の方で触れた「インサイト探索の草分け」的なプロジェクトで、掲示板機能をつかったチャットグルインも試しに行ったのですが、さすがに当時は時期尚早の感が否めませんでした。

あれから20年近く経ち、withコロナの新しい生活様式の定着にあわせて、オンライン定性調査の実施も増え、今後は安定的に質の高い情報を得ることができるようになるでしょう。

グループインタビューよりも気軽に、かつ、手ごろな費用で定性的な情報を得ることができる、オンラインツールを活用した新商品開発のための調査手法について詳しく知りたい方は、こちらからお問い合わせください。

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