はじめてのリサーチ

はじめてのリサーチ

今回は、仕事でリサーチを担当したり、あるいは、リサーチ結果を活用したりする方のご参考になるよう、リサーチについての基本的な事項をおさえたうえで、有効なデータを収集するためのちょっとした工夫などについてご紹介します。

さて、いきなりですが、リサーチの話をすると、

「リサーチで売り上げは増えるのか?」

と聞かれることがあります。
リサーチをしたからと言って、すぐに売り上げがあがるわけではありませんが、リサーチを活用すると、以下の5つのステップで、売り上げを増やす仕組みをつくることができます。

リサーチで業績向上のベースを作るステップ。リサーチを正しく行えば、今まで見えていなかった顧客のニーズや数字がわかりやすい形で表れる。それにより、顧客のニーズをより正確に把握して、より消費者に合った商品・サービスを提供できる。そうすれば、消費者に選ばれやすくなり、使い続けてもらえる可能性も高くなる。 その結果、継続的に利益を上げるベースができてくる。

・・・のはずなんですが、
リサーチを実施している企業の中には、

「アンケート調査をしただけで終わってしまっている」
「調査結果が出ても、だからどうなの?となっている」

とお悩みのところも少なくないようです。

多くの場合、リサーチをうまく活用できていない原因は以下のようなものです。

リサーチをうまく活用できてない3つの原因。「そもそもリサーチの精度が低い」「優先的に取り組むべき課題を見つけることができていない」「数値の背景にある情報を引き出せていない」

原因がわかれば対策を立てることができます。

① そもそもリサーチの精度が低い
リサーチの企画段階により多くの時間をかけ、リサーチをする前からある程度結果を予想し、採るべき対策についての仮説を持っておく必要があります。
仮説立案に際しては、社内の関係者へのヒアリングや少人数の顧客へのデプス・インタビューなどの定性的なアプローチも有効です。

② 優先的に取り組むべき課題を見つけることができていない
現状の評価だけではなく、重要度も特定できるようなリサーチ設計をしましょう。
たとえば、重回帰分析などで回答データ間の関係性を分析することにより、ターゲット層による評価により大きな影響を与える項目を特定することができます。

③ 数値の背景にある情報を引き出せていない
自由記述式の質問で「生の声」を集めて、丁寧に読み取り分析することで、リサーチ結果の解釈を支援する有用な情報を得ることができます。これは是非やってください。
「満足度80%」のような数値はわかりやすいのですが、ひとたび見てしまうと、何か最初からわかっていたことのように感じてしまうため、受け流されてしまいがちです。
同じ評価でも異なる背景が現れる自由回答は、数値に彩りを加えてくれ、リサーチ結果への理解が深まります。
また、アフターコーディングやテキスト分析などにより、記述内容を定量的に把握することで、客観的な判断が可能となります。

以下に、定量的なアプローチと定性的なアプローチのメリット・デメリットを簡単にまとめています。
定量・定性の両面からのアプローチで、客観的で網羅的な情報と、深く豊かな情報をバランスよく引き出すことができれば、リサーチで得られた情報が社内の関係者全員にわかりやすい形で共有され、消費者、顧客に対する理解が進みます。

定量調査は「数値」で表すのに対して、定性調査では「コトバ」で表す。それぞれのアプローチにはメリット・デメリットがある。

ここまでは「使えるリサーチ」に必要な枠組みの話です。
そして、ここからは「使えるリサーチデータ」を得るためのテクニックについての話です。

調査はコミュニケーション
「コトバ」で表す定性的なアプローチは、それこそコミュニケーションそのものです。
リサーチがうまくいくかどうかは、インタビュアーや分析者のスキルによるところが非常に大きくなります。
同様に、定量的なアプローチにおいても、客観的・網羅的で、かつ、精度の高い情報を得ようとすれば、質問文のワーディングや回答方法に留意して、ムダやムリのない上手な質問を適切な順序で組み立てていく必要があります。

回答方法
リサーチで利用する回答方法のうち、代表的なものは以下のようなものになります。

SA(Single Answer)
「当てはまるもの一つだけに○をつけて」もらう単一回答方式です。
この方式では、「よい/よくない」などの選択肢を並べる順番(よい→よくない / よくない→よい)や、「どちらともいえない」があるかどうかによって、回答の分布が変わることがあります。
また、「非常に…」とするか「とても…」とするか、などの評価ラベルの表現についても重要な検討ポイントとなります。
中間選択肢「どちらともいえない」を含めるかどうかについては、諸説いろいろあり、正解はないようです。
「満足/よい/好き」といったポジティブな評価、あるいは、「不満/よくない/嫌い」といったネガティブな評価の割合を見ることが目的であれば、評価がはっきりとしない人用に「どちらともいえない」を含んでいたほうがよいでしょう。

購入意向質問の例。ニュートラル(どちらともいえない)を含む場合。

また、たとえば、「購入意向の強さを詳しくみてみたい」場合には、「どちらともいえない」を外して、以下のようなアンバランスな評価スケールにしてみるのも効果的です。

購入意向質問の例。ニュートラル(どちらともいえない)を含まず、購入意向の強さをより詳しくみる場合。

MA(Multiple Answer)
「当てはまるものすべてに○をつけて」もらう複数回答方式です。
この方式でも、並べる順番による影響に留意する必要があります。
特に長い=項目数の多いリストの場合には、先頭部分の項目のみがチェックされやすい傾向がありますので、選択肢の数の絞り込みが重要なポイントとなります。
10項目~多くても15項目程度におさめることができればよいでしょう。
MAは複数の項目について1問で聞いてしまうことができる便利な回答方法ですが回答モレが発生するリスクもあります。
そのため、たとえば不満足経験のような重要なテーマについては、MAではなく、以下のようなSA方式で回答してもらうのがよいでしょう。

重要なテーマについては、MAではなく、SA方式で回答してもらうのが望ましい。

OE(Open ended answer)
評価理由などを具体的に説明してもらう自由回答方式です。
くどいようですが、少なくとも1問は自由回答方式の質問を盛り込んでおきましょう。
「なぜならば、『・・・』だから」のような穴埋め方式にしたり、「できごとやお気持ちなど、具体的に教えてください」のような聞き方をしたりすることで、理由や気持ちを具体的に詳しく聞き出すことができます。

質問の順序
“GeneralからSpecificへ”が調査の基本で、たとえば、「全体としてどのように思いますか?」と全体評価を聞いた後で、「以下のそれぞれについてはいかがですか?」と細かい評価ポイント(詳細項目評価)についての質問を続ける方式が一般的です。

あらかじめ、評価の対象となる事柄についての知識ベースをそろえたうえで、全体評価をしてもらいたい場合など、詳細項目評価→全体評価の順に回答してもらうことがあります。
当社の経験では、詳細項目評価→全体評価の順で回答してもらうと、全体評価→詳細項目評価の場合に比べて、全体的な質問に対する回答のばらつきが小さく、評価のレベルも低くなる傾向があるようです。

今回は、「使えるリサーチ」に必要な枠組みと、「使えるリサーチデータ」を得るためのテクニックについてご紹介してまいりました。
具体的なリサーチ手法については、リサーチ資料集のページにご紹介していますので、あわせてご覧になってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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