はじめてのリサーチ~市場調査活用の第一歩

はじめてのリサーチ

仕事で市場調査/マーケティングリサーチを担当したり、あるいは、調査結果を活用したりする方のご参考になるよう、市場調査についての基本的な事項をおさえたうえで、有効なデータを収集するためのちょっとした工夫などについてご紹介します。

市場調査で売り上げが増えるのか?

市場調査の話をすると、

「調査で売り上げは増えるのか?」

と聞かれることがあります。
市場調査をしたからと言ってすぐに売り上げがあがるわけではありませんが、調査を活用すると以下のステップで、売り上げを増やす仕組みをつくることができます。

顧客ニーズを知る

市場調査/マーケティングリサーチを正しく行えば、今まで見えていなかった顧客のニーズがわかりやすい数値などの形で表れてきます。

STEP
1

顧客ニーズにこたえる

顧客のニーズをより正確に把握して、より消費者に合った商品・サービスを提供できます。

STEP
2

顧客に選ばれ、選ばれ続ける

そうすれば、消費者に選ばれやすくなります。さらに、使い続けてもらえる可能性も高くなります。

STEP
3

売り上げが増える

その結果、継続的に利益を上げるベースができてきます。

STEP
4

・・・のはずなんですが、
市場調査を実施している企業の中には、

「アンケート調査をしただけで終わってしまっている」
「調査結果が出ても、だからどうなの?となっている」

とお悩みのところも少なくないようです。

多くの場合、市場調査をうまく活用できていない原因は以下のようなものです。

  1. そもそも調査の精度が低い
  2. 優先的に取り組むべき課題を見つけることができていない
  3. 数値の背景にある情報を引き出せていない

原因がわかれば対策を立てることができます。

① そもそも調査の精度が低い

市場調査の企画段階により多くの時間をかけ、調査をする前からある程度結果を予想し、採るべき対策についての仮説を持っておく必要があります。
仮説立案に際しては、社内の関係者へのヒアリングや少人数の顧客へのデプス・インタビューなどの定性的なアプローチも有効です。

② 優先的に取り組むべき課題を見つけることができていない

現状の評価だけではなく、重要度も特定できるような調査設計をしましょう。
たとえば、重回帰分析などで回答データ間の関係性を分析することにより、ターゲット層による評価により大きな影響を与える項目を特定することができます。
そうすると、重要度の高いところから優先的に取り組んでいくことができます。

③ 数値の背景にある情報を引き出せていない

自由記述式の質問で「生の声」を集めて、丁寧に読み取り分析することで、調査結果の解釈を支援する有用な情報を得ることができます。これは是非やってください。
「満足度80%」のような数値はわかりやすいのですが、ひとたび見てしまうと、何か最初からわかっていたことのように感じてしまうため、受け流されてしまいがちです。
同じ評価でも異なる背景が現れる自由回答は数値に彩りを加えてくれ、調査結果への理解が深まります。
また、アフターコーディングやテキスト分析などにより、記述内容を定量的に把握することで客観的な判断が可能となります。

以下に、定量的なアプローチと定性的なアプローチのメリット・デメリットを簡単にまとめています。
定量・定性の両面からのアプローチで、客観的で網羅的な情報と深く豊かな情報をバランスよく引き出すことができれば、調査から得られた情報が社内の関係者全員にわかりやすい形で共有され、消費者、顧客に対する理解が進みます。

分類特徴主なメリット主なデメリット
定量的アプローチ「数値」で表す
<主な調査手法>
郵送調査、電話調査、インターネット調査、会場調査、など
提示された選択肢の中から当てはまるものを選ぶことができるため、回答者の負担が少ない。
数値情報として集計しやすく、全体の構成を把握しやすい。
表面的な情報にとどまり、評価の理由まではわからない場合がある。
多数意見に注目しがちになる場合がある。
定性的アプローチ「コトバ」で表す
<主な調査手法>
デプス・インタビュー、グループ・インタビュー
理由や気持ちを具体的に聞き出すことができる。
対象者の表情や発言の流れからも有用な情報を得ることができる。
調査がうまくいくかどうか、インタビュアーや分析者のスキルによるところが大きい。
結果の解釈に客観性が保たれにくい。

使えるデータを得るためのテクニック

ここまでは「使えるリサーチ」に必要な枠組みの話です。
そして、ここからは「使えるリサーチデータ」を得るためのテクニックについての話です。

調査はコミュニケーション

「コトバ」で表す定性的なアプローチは、それこそコミュニケーションそのものです。
調査がうまくいくかどうかは、インタビュアーや分析者のスキルによるところが非常に大きくなります。
同様に、定量的なアプローチにおいても、客観的・網羅的で、かつ、精度の高い情報を得ようとすれば、質問文のワーディングや回答方法に留意して、ムダやムリのない上手な質問を適切な順序で組み立てていく必要があります。

回答方法

市場調査で利用する回答方法のうち、代表的なものは以下のようなものになります。

SA(Single Answer)

「当てはまるもの一つだけに○をつけて」もらう単一回答方式です。
この方式では、「よい/よくない」などの選択肢を並べる順番(よい→よくない / よくない→よい)や、「どちらともいえない」があるかどうかによって、回答の分布が変わることがあります。
また、「非常に…」とするか「とても…」とするか、などの評価ラベルの表現についても重要な検討ポイントとなります。
中間選択肢「どちらともいえない」を含めるかどうかについては、諸説いろいろあり、正解はないようです。
「満足/よい/好き」といったポジティブな評価、あるいは、「不満/よくない/嫌い」といったネガティブな評価の割合を見ることが目的であれば、評価がはっきりとしない人用に「どちらともいえない」を含んでいたほうがよいでしょう。

【真ん中に「どちらともいえない」を置く場合】

Q あなたは、この商品をどの程度購入したいと思いますか。(1つだけ) 

ぜひ購入したいやや購入したいどちらともいえないあまり購入したいとは思わないまったく購入したいとは思わない
この商品を・・・54321

また、たとえば、「購入意向の強さを詳しくみてみたい」場合には、「どちらともいえない」を外して、以下のようなアンバランスな評価スケールにしてみるのも効果的です。

【購入意向の強さを詳しく調べたい場合】

Q あなたは、この商品をどの程度購入したいと思いますか。(1つだけ) 

ぜひ購入したい購入したいやや購入したいあまり購入したいとは思わないまったく購入したいとは思わない
この商品を・・・54321

「どちらともいえない」については以下のコラムでも説明しています。

「どちらともいえない」を選択肢に含めるかどうか?

MA(Multiple Answer)

「当てはまるものすべてに○をつけて」もらう複数回答方式です。
この方式でも並べる順番による影響に留意する必要があります。
特に長い=項目数の多いリストの場合には、先頭部分の項目のみがチェックされやすい傾向がありますので、選択肢の数の絞り込みが重要なポイントとなります。
10項目~多くても15項目程度におさめることができればよいでしょう。
MAは複数の項目について1問で聞いてしまうことができる便利な回答方法ですが回答モレが発生するリスクもあります。
そのため、たとえば不満足経験のような重要なテーマについては、MAではなく、以下のようなSA方式で回答してもらうのがよいでしょう。

Q 以下のそれぞれの項目について、過去1か月間にあなたご自身が経験されたことがあるかどうか教えてください。(ヨコに1つずつ)  

過去1か月間に経験したことが・・・あるない
△△ができなかった12
□□に不具合があった12
××が使えなかった12

OE(Open ended answer)

評価理由などを具体的に説明してもらう自由回答方式です。
くどいようですが、少なくとも1問は自由回答方式の質問を盛り込んでおきましょう。
「なぜならば、『・・・』だから」のような穴埋め方式にしたり、「できごとやお気持ちなど、具体的に教えてください」のような聞き方をしたりすることで、理由や気持ちを具体的に詳しく聞き出すことができます。

質問の順序

“GeneralからSpecificへ”が調査の基本で、たとえば、「全体としてどのように思いますか?」と全体評価を聞いた後で、「以下のそれぞれについてはいかがですか?」と細かい評価ポイント(詳細項目評価)についての質問を続ける方式が一般的です。

全体評価を詳細項目評価より先に聞く方式詳細項目評価の後で全体評価を聞く方式
問. ○○について、全体としてどの程度満足していますか?問. 以下のそれぞれについてどの程度満足していますか?

   △△について
   □□について
   ××について
問. 以下のそれぞれについてはいかがですか?

   △△について
   □□について
   ××について
問. 前問で評価していただいたことを総合して、○○について、全体としてどの程度満足していますか?

あらかじめ、評価の対象となる事柄についての知識ベースをそろえたうえで、全体評価をしてもらいたい場合など、詳細項目評価→全体評価の順に回答してもらうことがあります。
当社の経験では、詳細項目評価→全体評価の順で回答してもらうと、全体評価→詳細項目評価の場合に比べて、全体的な質問に対する回答のばらつきが小さく、評価のレベルも低くなる傾向があるようです。

ご紹介しました「使えるリサーチ」に必要な枠組みと「使えるリサーチデータ」を得るためのテクニックをはじめ、クライアントとして市場調査/マーケティングリサーチを導入・活用していく上で最低限知っておいた方が望ましい調査の基本的なポイントをまとめた小冊子をご希望の方に差し上げています。詳しくは以下のページをご覧ください。