調査票をつくるときに気を付けなければならないことが、バイアスがかからないようにすることです。
バイアスがかかると偏ったデータとなり、使えない調査結果になってしまいます。
バイアスの例としては、
- 特定の回答を選ぶように誘導する質問文になっている
- 質問する順番が回答に影響を与えてしまう(順序バイアス)
などがあり、今回は、「順序バイアス」について説明します。
「順序バイアス」に関しては、質問の順番だけではく、選択肢の並べ方にも注意する必要があります。「系列位置効果」といわれる問題です。
たとえば、単語のリストを記憶してもらった後で思い出してもらうと、通常はリストの最初と最後の数項目が思い出される割合が高くなり、中ほどの項目が思い出される割合は低くなります。
リストの最初の方の項目が思い出されやすいのは初頭効果によるもので、最後の方の項目が思い出されやすいのは新近性効果によるものです。
アンケート調査を実施する場合にも、最初の方が恩恵を受けやすくなる初頭効果がみられるものがあります。
複数回答(MA)質問における初頭効果
たとえば、複数の選択肢からあてはまるものをすべて選んでもらう複数回答(MA)質問の場合、初頭効果が働くとリストの最初の方にある項目が選ばれやすくなります。
以下は、当社で実施した複数の実験的な調査の、約10,000人分の回答データをまとめて分析したものです。
それぞれの調査で提示したリストの内容は全く異なるものですので、リスト上の掲載順位以外に共通する要素はありませんが、リストの先頭2項目の選択率が明らかに高くなっており、初頭効果の影響をうかがわせる結果となりました。
そもそもの選択肢リストを作成する段階で、多くの人に当てはまりそうな項目から順に並べていくようなやり方をしている場合には、初頭効果が働くと、メジャーな項目はよりメジャーに、マイナーな項目はよりマイナーになってしまい、実態とはかけ離れた調査結果になってしまう恐れがあります。
また、選択肢リストが長くなるために2段に分けている場合も、各段の先頭項目が選ばれやすくなるため注意が必要です。
初頭効果への対応策
インターネット調査では、複数回答質問の選択肢をランダムな順番で表示することで、初頭効果の影響をできるだけ少なくすることができます。
たとえば、
A. サイズ関連
B. デザイン関連
C. 品質関連
など、いくつかの項目がワンセットのかたまりとしてある場合は、ブロックランダマイズというやり方があります。
A、B、Cのブロックをランダムな順番で表示し、さらにブロック内での一つひとつの項目の表示順もランダムにします。
紙の調査票を使用する場合は、選択肢の上下を入れ替えた2種類を用意して、対象者によって使い分けることで初頭効果によるバイアスを軽減することが可能です。
2種類の調査票を準備するのは面倒ですが、2種類のデータの順番を入れ替えて統合するのはもっと面倒な作業になります。しかし、面倒な作業こそ重要です。
細かいところまで気を配り、面倒をいとわずに、丁寧に準備をすることで、調査からより正確な情報を得ることができるのです。
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