イチロー選手がついにメジャーリーグで史上30人目となる3,000本安打を達成しました。

日本のプロ野球において1,278本の安打数を残したイチロー選手は、2001年に野手としては日本人初のメジャーリーガーとなり、驚異的な適応力で初年度からヒットを量産、2004年にはシーズン最多安打記録(262本)を打ち出し、2010年まで10年連続シーズン200本安打を達成しました。
2012年の途中でニューヨーク・ヤンキースに移籍して以降は出場機会も限られてきましたが、16年目のシーズンでメジャー通算3,000本安打の偉業達成です。

イチロー選手の大リーグにおける安打数推移

【イチロー選手の大リーグにおける安打数推移】

さて、野球は特に数字と親和性の強いスポーツです。チームスポーツではあるものの、ゲーム展開の基本はピッチャー対バッターの個人対決のため、個人成績にも注目が集まりやすいですし、選手の評価ポイントも打率、安打数、打点、本塁打数、盗塁数、勝利/セーブ数、防御率、奪三振数など多種多様でデータの宝庫です。
野球におけるデータの活用というと、日本の場合は野村克也氏のID野球が有名ですが、アメリカでは「セイバーメトリクス」という考え方があります。

セイバーメトリクスは、アメリカ野球学会の略称SABR(Society for American Baseball Research)と測定基準(metrics)を組み合わせた造語で、野球に関するデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦術を考える分析手法のことです。メジャーリーグのオークランド・アスレチックスが、年棒総額はリーグ最低クラスながらもセイバーメトリクスを用いたチーム編成により快進撃を続けたことで注目を集めました。アスレチックスの成功物語は『マネーボール』というノンフィクション小説に描かれベストセラーになりましたし、ブラッド・ピット主演で映画化もされたので、覚えている方もいらっしゃるでしょう。

セイバーメトリクスに基づく評価基準の中には従来の野球界の常識と異なるものもあります。
例えば、チームの勝利のため投手に求められるのは失点を抑えることですが、勝利/セーブ数や防御率・自責点といった数字は、野手の守備力や運不運など本人以外の要因にも左右されるためあまり評価せず、投手自身の能力が純粋に反映されるのは奪三振数、被本塁打数(+被長打率)、与四死球数と考えます。
打者の場合は投手の評価基準の裏返しとなり、打率、打点、安打数などよりも、本塁打数や四死球数といった長打力、選球眼、出塁率が評価されます。
また、得失点との相関を考えると、戦術としてバントや盗塁、敬遠は用いない方がよいとされます。
上記のような考え方から生まれたセイバーメトリクスの指標には以下のようなものがあります。

DIPS (Defence Independent Pitching Statistics)
算出式:{(与死球+死球-敬遠)×3+被本塁打×13-奪三振×2}÷投球回+補正値

OPS (On-base plus slugging)
算出式:出塁率{(安打+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)}+長打率(塁打÷打数)

メジャーリーグのサイトには、所属選手の個人成績としてセイバーメトリクスの指標を載せている球団もあります。

野球に限らずスポーツの醍醐味や選手の魅力は数字だけで測れるものではありませんが、データの見方を広げることにより楽しみ方も一層増すのではないかと思います。

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