6月から改正道路交通法が施行され、危険な運転を繰り返した自転車利用者には安全講習が義務付けられることになりました。
14歳以上が対象で、以下の14の危険行為が摘発の対象となります。

①信号無視
②通行禁止違反
③歩行者専用道路徐行違反
④通行区分違反
⑤路側帯通行時の歩行者交通妨害
⑥遮断機踏切立ち入り
⑦交差点安全進行義務違反等
⑧交差点優先車妨害等
⑨環状交差点の安全進行義務違反
⑩指定場所一時不停止等
⑪歩道走行時交通方法違反
⑫ブレーキ不良自転車運転
⑬酒酔い運転
⑭安全運転義務違反

3年以内に2回以上摘発されると、3ヵ月以内に警察署等で実施される安全講習(3時間程度で講習料は5,700円)への参加が命じられ、受講しなければ5万円以下の罰金が科せられます。

自転車は法律上は「軽車両」となりますので、もともと一般車両と同様の交通ルールに従う必要がありました。
しかしながら、これまではよほど悪質な違反でなければ取り締まりの対象とはならず罰則規定は有名無実化されていたように思いますし、自転車に関する安全教育の機会もほとんどなかったため、利用者側も違反内容について正しく認識している人は少なかったのではないでしょうか。
上記の14項目についても「信号無視」「酒酔い運転」など常識的に判断できそうな内容もありますが、他は具体的にどのような行為が違反となるか分かりにくい表現もありますので、

・左側通行で車道を走るのが原則
・例外的に歩道を走る場合は、歩行者優先で車道側を徐行しなければならない
・交差点では一時停止しなければならない
・二人乗りは禁止(6歳未満の子どもを1人だけ乗せる場合を除く)
・(標識等で許可された場所を除き)自転車の並走禁止
・夜間はライト及び尾灯(反射器材)を点けて走らなければならない
・運転中の携帯電話使用禁止
・傘を差しながらの運転禁止
・イヤホン(片耳はOK?)・ヘッドホンを付けながらの運転禁止

といった具合に分かりやすく周知してほしいところです。

自転車は子供から高齢者まで幅広い年代の人達が手軽に利用できる移動手段ですし、近年では健康志向あるいは環境への配慮などから自転車に乗る人も増えてきました。
(財)自転車産業振興協会によると、ここ数年スポーツタイプの自転車や電動アシスト車の販売が急増しており、全国の自転車保有台数は7000万台を超えているとのことです。

自転車の利用が増えてくると交通事故の増加も心配されますが、警察庁の発表によると、意外にも自転車関連の事故は年々減少してきており、10年前に比べると、特に深刻な事態につながりやすい自動車・バイクとの接触事故が減っているのが分かります。

自転車の安全運転

しかしながら、「歩行者」相手の事故件数だけは10年前から減っておりません。全体に占める割合が大きくないため上のグラフでは分かりにくいのですが、2004年の2,543件に対し、2014年は2,551件となっています。
歩行者相手の事故ということは自転車側が加害者となるケースがほとんどとなるわけで、場合によっては死亡事故につながらないとも限りませんし、相手の被害の程度によって思わぬ賠償責任を負うことにもなりかねません。
2013年には、神戸で小学5年生の児童が乗った自転車にはねられた女性が寝たきり状態となってしまい裁判になりましたが、地裁の判決では児童の親に対し約9,500万円の賠償が命じられました。

過酷な判決や法の厳罰化は、自転車であっても危険運転行為を軽く考えると重大事故につながるという危機意識を強く促しているといえるでしょう。
ただ、自転車専用道の設置や駐輪スペースの確保が進んでいない等、日本は自転車の利用者にとって道路環境の面で多くの不備があることは否めませんので、性急な取り締りだけでなく、地道な安全教育とともに、自転車利用者と歩行者双方の立場から現実的な交通ルールや運転マナーを考える機会も必要かと思います。

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