今年のノーベル賞は、大村智氏が生理学・医学賞、梶田隆章氏が物理学賞と、2人の日本人が受賞しました。
大村氏は、失明をもたらす熱帯感染症の特効薬「イベルメクチン」開発など寄生虫病に対する新しい治療法発見の功績が、また、梶田氏は、観測施設「スーパーカミオカンデ」でニュートリノ振動を発見し、それまでの素粒子物理学の定説を覆してニュートリノに質量があることを実証した成果が、それぞれ認められたものです。

これで日本人のノーベル賞受賞者は24人となりました(米国籍の2人を含む)。
ノーベル賞は、「物理学賞」「化学賞」「生理学・医学賞」「文学賞」「平和賞」「経済学賞」の6部門ありますが、日本人の受賞は自然科学系3部門が圧倒的で、中でも物理学賞が11人と全受賞者の半数近くを占めます。日本人は経済学賞のみまだ受賞しておらず、これまでのところ女性の受賞者はいません。

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ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて作られ、経済学賞を除く5部門については1901年に第1回授与式が行われました。経済学賞は、ノーベルの遺志によって設立された賞ではありませんが、スウェーデン国立銀行の記念賞として1969年より授賞に加わりました。
これまでに870人の個人と23団体がノーベル賞を受賞しています。
過去の受賞者を国別にみると、3分の1以上が米国籍と圧倒的ですが、欧米以外では日本が大健闘しています。特に、2000年代に入ってからは日本人の複数受賞が増えたこともあり、自然科学系においては日本人研究者の受賞ラッシュという印象です。

ノーベル賞は、授賞決定発表時点で本人が生存していることが受賞条件となっており、文学賞を除き一度に3人まで同時受賞することができます。また、平和賞のみ団体での受賞が認められています。
各賞の選考は、物理学賞、化学賞、経済学賞の3部門についてはスウェーデン科学アカデミーが、生理学・医学賞はカロリンスカ研究所が、平和賞はノルウェー国会が、文学賞はスウェーデン・アカデミーがそれぞれ行います。
授賞式は、毎年ノーベルの命日にあたる12月10日に、スウェーデンのストックホルム・コンサートホールで開催され、平和賞のみ同日にノルウェーのオスロ市庁舎で行われます。

なお、ノーベル賞には数学賞がありませんが、「フィールズ賞」が数学のノーベル賞と言われたりします。フィールズ賞は、1936年にカナダの数学者ジョン・チャールズ・フィールズの提唱により設けられました。
毎年選考されるノーベル賞とは異なり、フィールズ賞は4年に1度開催される「国際数学者会議」において授与され、受賞者も40歳以下の若手数学者に限定されます。
日本人では、これまでに小平邦彦氏(1954年)、広中平祐氏(1970年)、森重文氏(1990年)の3人がフィールズ賞を受賞しています。

日本人の研究が世界的に認められるのは誇らしいことではありますが、特に自然科学分野では業績の評価が定まるまで数十年の時間がかかることも少なくありませんし、すぐに成果を求めるのではなく長いスパンで研究を支援する環境づくりも大事ですね。
ちなみに、日本の科学技術関係予算は3兆6000億円前後で、2000年以降ほぼ横ばいとなっております。

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